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仙台駅からわずか2キロ「こんな街中に」アーバンベアの撮影に成功

 仙台市青葉区霊屋下の瑞鳳寺境内で、ツキノワグマの撮影に成功した。数年前から付近でクマの目撃情報が相次いでいたことから、動く物を感知して自動録画する「トレイルカメラ」を設置。体長1メートル強の1頭が寺の周辺を歩く姿を捉えた。
(編集部・及川圭一、せんだい情報部・桜田賢一)

瑞鳳寺南側の竹林ののり面を上るクマ=4月26日午前0時23分

 クマが写っていたのは4月26日。まず午前0時23分、境内の竹林を東回りに進んで寺南側ののり面を上る様子が撮影された。8時8分には、寺北側の林を西方向に戻る姿を記録した。

 付近住民の証言などによると、クマは広瀬川沿いに移動してきて近くの穴蔵稲荷神社付近で高台へと上がり、瑞鳳殿の参道を横切って瑞鳳寺境内に侵入。旬のタケノコを食べていたとみられる。

 撮影地はJR仙台駅の南西約2キロ。観光客が多く訪れ、近くに幼稚園もある。付近では数年前から、市街地で餌を求める「アーバンベア」(都市型クマ)の可能性がある個体の目撃情報が相次いでいた。

 森林総合研究所東北支所(盛岡市)の大西尚樹動物生態遺伝チーム長は「瑞鳳寺付近は市西部の奥山から続く山林の東端だ。奥山はクマが増えてぎちぎちの状態なので、市中心部近くまで分布域が拡大し、クマ側の最前線になっているのだろう」と推し量る。

 撮影開始は昨年4月。場所を変えながら継続し、今年4月から、寺の了承を得て境内にカメラ3台を設置していた。市中心部でクマが撮影された事例は「聞いたことがない」(仙台市)という。目撃情報は見間違いも多いとされ、出没が実証された。

墓地と接する瑞鳳寺北側の林を歩くクマ=4月26日午前8時8分

住民は万が一の事態を懸念

 「これほどの都市部にクマが出るなんて」「通園、通学の子どもが心配だ」。多くの市民らが行き交う仙台市中心部で、クマの姿が撮影された。東北をはじめ、国内では近年、人里での人身被害が増加傾向にあり、付近住民らは万が一の事態を懸念する。

 「アーバンベアは人間を怖がらないと聞く。市中心部だから人通りが多いし、けが人が出なければいいが…」。クマが出没した瑞鳳寺に隣接するライオンズマンション瑞鳳の管理組合理事長渡辺章悟さん(50)が表情を曇らせる。

 渡辺さんは昨年4月にも、実家がある名取市ゆりが丘地区で道路を横断するクマを目撃した経験がある。「あちらは住宅地とはいえ山の上なのでまだ分かるが、JR仙台駅から2キロほどの場所にいるのだから恐ろしい」と語り、住民に注意を呼びかける方針だ。

 今回は午前8時過ぎにもクマが撮影された。瑞鳳寺境内には幼稚園があり、歩いて通う園児もいる。男児(5)が通園する40代の女性は「登園時がとても怖い」と漏らす。境内を抜ける近道は人通りがほぼない。クマとの遭遇を恐れて、通行人が多い瑞鳳殿の参道まで遠回りして登園させているという。幼稚園長を務める瑞鳳寺の鎌田文恵住職は「毎朝、境内の掃き掃除をするが、痕跡がなく出没に気付かなかった。幼稚園の先生たちには以前から気を付けるよう言ってあり、今後も注意したい」と語った。

 環境省によると、2016~20年度の全国のクマによる人身被害発生場所の推移は表の通り。18年度までは山林での発生が半数以上を占めたが、次第に住宅地・市街地や農地での被害が増え、20年度に山林での被害件数を上回った。

 仙台市は今回のクマ出没を受け、ウェブ上で提供するクマ出没情報マップなどで注意喚起した。環境共生課の金久保美喜課長は「瑞鳳寺周辺は奥山につながる森林で、クマが出ても不思議はない」と説明。クマよけの鈴などを携帯し音を出して歩いたり、マップなどで最新情報を得たりするよう呼びかける。

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