(905)蟻が蟻銜(くは)へて急ぐ雨催ひ/山田桂(1947年~)
蟻(あり)は新しい巣に引っ越しをする際、仲間をくわえて別の巣に運ぶことがよくあるらしい。「雨催(もよ)ひ」は雨を催(もよお)す、つまりもうすぐ雨が降りそうだということ。にわかに空がかき曇り雨の予感が作者に到来したとき、既に蟻はせっせと仲間を運んで道を急いでいる。「急」の字が空の急変をも表して見事だ…
関連リンク
- ・(904)ひだる神憑(つ)く前に喰(く)ふ一夜鮨(すし)/堀本裕樹(1974年~)
- ・(903)気落ちとも自己嫌悪とも蛇苺/江中真弓(1941年~)
- ・(902)夏の夜の至福大きなバスタオル/阪西敦子(1977年~)
- ・(901)夏は風ギンドロの葉の喝采の/照井翠(1962年~)
- ・(900)薊までおむつのとれた尻軽く/神野紗希(1983年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。