(954)海月(くらげ)など眺めてをりて遅れけり/前田攝子(1952年~)
水族館の薄暗い水槽には、外の社会とは違った異世界のようなゆったりした時間が流れている。中でも海月は水中をゆらゆらと浮遊し、眺めていると時間を忘れ不思議な感覚になる。「遅れけり」は、約束の時間に遅れたのだろうか? いや、作者は自身が社会の時間感覚から逸脱しているように感じたのだろう。むしろその遅れる…
関連リンク
- ・(953)鵜とともに心は水をくぐり行く/上島鬼貫(1661~1738年)
- ・(952)ぬりかべというばけものと夏の月/渡辺誠一郎(1950年~)
- ・(951)仏壇も仏も洗ひ家暑し/山口昭男(1955年~)
- ・(950)夜の冷蔵庫開けるな海があふれ出す/高野ムツオ(1947年~)
- ・(949)ビーチパラソルの私室に入れて貰ふ/鷹羽狩行(1930~2024年)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。