(955)虹に声奪はれし我ら虹仰ぐ/小川軽舟(1961年~)
「天を仰ぐ」だと、チャンスを逃して残念がるとか、進退窮まって祈る、といったときに使う慣用句。この句は「虹仰ぐ」。皆が見入るほど見事な虹で、声も出ない。だから「我(われ)ら」は見上げるほかに何もできない。「天を仰ぐ」同様に、虹を仰ぐ人間のちっぽけさも思われる。広大にして無辺なる自然界への憧憬(しょう…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。