埋もれる若年層の声 <女性と困難 支援の現場から(3)孤立>
性被害やドメスティックバイオレンス(DV)、経済困窮などの問題に包括的に対応する「女性支援法」が4月、施行された。女性たちが直面するさまざまな課題には、家父長制や男女格差の影響が色濃く残る。東北の当事者や支援者の声から、困難の実相を見つめる。(せんだい情報部・菊池春子、丸山磨美)=6回続き=
「こんばんは、待ってたよ」「何飲む?」。何げないやりとりが「カフェ」に立ち寄った女性とスタッフとを緩やかにつなぐ。
7月5日、金曜の夜。仙台市中心部の繁華街・国分町のビルの一室で開かれた「トナカフェせんだい」。20代を中心とした女性たち11人が訪れ、お菓子を食べたり、女性相談員と話したりと思い思いに過ごした。
トナカフェは、市から委託を受けた市内のNPO法人キミノトナリが2022年にスタートした。主に10~20代の女性を対象にした「アウトリーチ型相談支援事業」で、月に3、4回程度開催。23年度は延べ約400人が訪れた。
開催日にはスタッフが繁華街を巡る「夜回り」も行う。街行く女性に声をかけ、パンフレットを渡しつつ困り事を聞き、カフェに案内する。特に夏場の路上や公園では、飲酒している未成年の女性に目を配る。
代表理事の東田美香さん(55)は「利用者の中には家族関係などに課題を抱え、どこにもつながらないまま孤立している女性が少なくない。支援を必要とする人がいそうな場所に積極的に出向き、潜在的なニーズを掘り起こす必要がある」と話す。
女性支援法は若年層などを念頭に置き、民間団体と協働して当事者にアプローチするアウトリーチの推進を掲げる。若年層と、どのように関わりを持っていくかは女性支援の中でも大きな課題だ。
市男女共同参画推進センターが行う女性相談の利用者は40代以上が多い。若年層は孤立や生活困窮などの問題があっても、相談窓口の利用にハードルを感じるだけでなく、困っていることを自覚していないケースがあるという。
トナカフェでは、話を聞く中で問題が見つかり、相談員が関係機関に同行する例もある。東田さんは「どんなきっかけでもいいから一度ここに来てみてほしい」と、パンフレットのデザインなども含め発信の工夫を重ねる。
若年層が多い仙台市内では、民間有志による「居場所づくり」も進む。
22年9月に発足した女性支援団体「Sendai-RIGHTS」は月1回、市中心部で主に10~20代を対象とした「まちなか保健室」を開く。有志の寄付金で運営し、お茶や食事、ヨガなどリラックスできるプログラムを無料で提供する。出入りは自由だ。
共同代表の一人、佐久間博子さん(36)は「ほぼ毎回、初めて来る人がいて、ニーズを感じる。多様な受け皿の一翼を担いたい」と願う。家庭や職場で苦しい思いをしても、声を上げられない女性は少なくない。まずは気軽に雑談できる場所が大切だという。
同じく共同代表で精神保健福祉士の小川真美さん(57)は「年齢を重ねて問題が深刻化してからではなく、早い段階で支援できればそれに越したことはない」と強調。「支援は数カ月で終わるものではない。持続的に活動できるよう、行政のサポートも重要だ」と訴える。
キミノトナリとSendai_RIGHTSの情報は各交流サイト(SNS)で確認できる。メールアドレスはキミノトナリがkiminotonarisendaisos@gmail.com、Sendai_RIGHTSがsendai_rights@yahoo.co.jp
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