レストランHACHI(株式会社オールスパイス)
ショクバ訪問|家でも簡単 通販に力
(※記事内容は2023年3月6日時点のものです)
オールスパイスが手がけるレストランには、テレビ番組で紹介され人気となったハンバーグやナポリタンを求めて行列ができることもしばしば。その味を「おうちでも手軽に」と、ここ数年は通販事業にも力を入れている。
商品開発から宣伝、受注、発送までを一手に担う外販事業部。取材で訪れた日、赤ちゃんをおんぶしながら伝票を作る社員の姿があった。昨年6月に産後4か月で職場復帰した田口夏希さん。現在1歳の陽翔(はると)君も一緒に「出社」している。会社の理解があってのことだ。「子どもと安心して働けることがモチベーションアップにつながる。お客さまに思いが届くよう、丁寧な仕事を心がけています」
5月に出産予定の菅井真生さんは、田口さんと共に女性が働きやすい業務マニュアル作りに率先して取り組んだ。「子どもがいるからキャリアを諦めるのはもったいない。いずれは私も子連れで働きたい」と目を輝かせる。今の仕事の魅力を「ゼロからイチを生み出す商品開発はやりがいがある」と語る。
明るく働く女性スタッフたちをまとめるのは、ただ一人の男性社員、小林優輝さん。「幸せを創るもう一つの家族でありたいという社長の思いに共感した」と、昨年9月に転職してきた。
飲食店のECサイト管理や販促に携わってきた経験を生かし、商品開発、取引先開拓やECサイトの販促企画などを担当。「多くのファンを持つHACHIの洋食を、地域ブランドとして全国に広めたい。仙台の新しい名物にしていきたいですね」とブランディングに熱が入る。
インタビュー|角田秀晴代表取締役/仙台・宮城の味 全国へ
-コロナ禍などで飲食店の経営も厳しさを増す中、さまざまな挑戦をしていますね。
燃料費高騰などの影響もあり難しいご時世ですが、「HACHI」のブランドを守るためにも、通販事業でカバーしていきたいと思っています。実店舗を構えながらの通販事業ですので、店舗で食べる味と通販商品の味が限りなく近い「再現性」を高める必要があり、それが大変ですね。
世の中はいろいろな災害が発生しますが、そこから何か新しいものを作り出さなければ生き残れません。東日本大震災後はナポリタンに活路を見いだし、2013年の大会で日本一になりました。コロナ禍ではテイクアウト、通販事業により注力するようになりました。災害から新しい歴史を生む。立ち止まらないことですね。
-これからの経営で必要になってくることは。
「高付加価値の商品」が必要になってくると思います。現在は「蔵王牛ビーフシチュー」や、通販を見据えた「仙台牛100%ハンバーグ」などを店舗で提供しています。カロリーや脂質を気にされるお客さま向けに、食後の血糖値上昇を抑える効果がある食物繊維配合の「ギルトフリープロテイン」の販売も始めました。値段なりの価値があるものを売り出していきたいと思っています。
-今後の展望は。
コロナ禍を乗り切るための多額の融資の返済が始まりました。そこに食品はじめ光熱費の急激な上昇。従業員の賃上げも待ったなし。厳しい環境の中、生き残るためには通販事業だけでカバーできず、HACHI各店では今春また大幅な値上げをせざるを得ません。そして既存店舗の閉鎖・統合といった手段も避けられません。そんな中でも、私たちが目標に掲げている「仙台・宮城のソウルフード」として認めていただけるよう店舗運営も通販事業も頑張ります。
※2024年4月3日掲載。年齢や企業データは当時
・社長略歴/かくた・ひではる 1963年仙台市生まれ。東北学院大中退。両親が開いた洋食店を高校時代から手伝い、85年に入社。30代の頃に東京などでサラリーマン生活をしたが、実家の洋食店を立て直すためUターン。2007年から現職。趣味は落語を聞くこと。
【企業概要】
1979年に角田秀晴代表取締役の両親が名取市に開いた洋食レストラン「HACHI(はち)」が始まり。90年に有限会社オールスパイスを設立、2011年に株式会社化した。鶏塩そばやデリバリー専門店も手掛け、現在、仙台市と近郊に計8店舗を構える。オンラインショップも展開し、冷凍のハンバーグやナポリタンなどを販売している。
21年にはお笑いコンビ「サンドウィッチマン」の富澤たけしさんが考案した「コペリタン」を発売し人気を博した。同年、本社を新築移転。「8LAB(ラボ)」と名付け、商品開発のためのキッチンや商談スペースなどを充実させた。
■本社所在地 〒980-0812 仙台市青葉区片平1-4-15 1階8LAB
■電話 022(268)9555
■資本金 1550万円
■従業員 140人