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宮城県が導入目指す宿泊税 反発強くても突進する「村井流」再び 07年発展税でも賛否

宿泊税の意見交換会で質問に答える村井知事=12日、宮城県庁

 村井嘉浩宮城県知事は、観光振興の財源確保策とする宿泊税の条例案を県議会9月定例会に提出した。新税創設をてこに、得意とする経済活性化策を打つ手法は「みやぎ発展税」を導入した往時と重なる。民間事業者の反発を受けても突き進む「村井流」を変わらず貫いている。
(編集部・鈴木悠太)

[みやぎ発展税]一定規模の県内企業を対象に、法人事業税に5%を上乗せする県の独自課税。課税期間は5年で、2008年3月に導入し23年3月に3回目の延長をした。税収は「富県宮城推進基金」に積み立て、産業振興や災害対策などの事業に充てる。23年度は約9300社から約53億6000万円を集めた。

 「発展税のようにまずは導入し、税収の使途は柔軟に考えたい」。村井知事は12日の県民説明会で、1期目の「成功体験」を宿泊税導入の説得材料に用いた。

 村井知事は2007年7月、産業振興策の財源として発展税の導入を表明。中小企業などから「唐突だ」と批判を浴びながらも同年9月の県議会定例会に条例案を提出。最大会派「自民党・県民会議」の支持を得て成立させた。

 当時は、発展税を原資とする立地奨励金がトヨタ自動車系の工場誘致に使われるという共通認識が広がっていた。「発展税の時のような成果物が、宿泊税には見えない」。自民会派のベテラン石川光次郎県議は比較して解説する。

 宿泊税は1泊6000円以上(素泊まり分)の宿泊者から300円を徴収する独自課税。事実上の値上げを宿泊者に迫る形となる旅館経営者らから「税収の使途が不明確」との不満がなお根強い。石川氏は「今回はどうなるか見通せない」と思案する。

 「分かりやすいところからお金を取る。既視感のある知事のやり口だ」

 県議会第2会派「みやぎ県民の声」の遊佐美由紀県議も賛否が飛び交った当時を知る一人。「行財政改革もなく税に頼るのはあまりに性急」と顔をしかめる。

 

発展税で味方だった市町村、宿泊税では苦言も

 発展税は、県町村会が導入を求める要望書を村井知事に渡すなど市町村からは賛同を得ていた。宿泊税を巡っては複数の市長らが「丁寧な説明を」と注文。大崎、栗原、蔵王の3市町議会が拙速な宿泊税導入に反対する意見書を可決した。

 ある県幹部は「発展税で味方だった市町からの苦言は、知事にとっては複雑だろう」と察する。別の幹部も「ここまでの反対は、知事も予想していなかったのではないか」と推し量る。

 「あの時はつらかった」。村井知事は就任間もなかった当時をこう振り返る。あれから17年。東日本大震災や新型コロナ禍をくぐり抜けた老練な政治家となり、「必要性を理解している人は多い」と宿泊税導入への自信は揺るがない。

 論戦を前に、村井知事を支える自民会派のあるベテランは賛否を決めかねている。「知事は宿泊税を甘く見ている節がある。成立しても、今までよりも議会や県民との間に禍根を残すかもしれない」と先行きを占う。

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