報道で苦悩、ひと頑張りする力に、複雑な心境… 津波9日後の救出を3人が振り返る 宮城・石巻
東日本大震災の津波が直撃した倒壊家屋から9日後に救出された石巻市の阿部任(じん)さん(30)と、当時の県警トップ、取材した新聞記者の3者がそれぞれの立場で語り合う「9日後の救出、それぞれの3・20」が22日、同市のみやぎ東日本大震災津波伝承館であった。
約30人が参加。阿部さんは現在、イベント主催の公益社団法人3・11メモリアルネットワーク(石巻市)の語り部として活動する。被災当時は高校生で、祖母と自宅にいた。救出後は「奇跡」「ヒーロー」と報じられたが、「自宅の裏山に逃げなかったことを後悔した。報道とのギャップが苦しかった」と打ち明けた。
震災9日後の朝時点で死者は4149人。捜索に携わる現場が焦燥感に覆われる中、県警本部長だった竹内直人さん(66)は「(阿部さんの救助は)真っ暗闇に光が差し、もうひと頑張りしようと誓いを新たにした出来事」と振り返った。
救出翌日の河北新報は「暗闇 奇跡の光差す」と大きく報じた。取材した佐藤崇編集部長(55)は「必要な情報を読者に届けられた一方、自分の記事で当事者が苦しんだ」と複雑な心境を語った上で「対話などで溝を埋めながら、地元紙として報道を続けなければいけない」と話した。
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