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秋の味覚の代表格【特集】スキ、ステキ 柿

 青空に赤黄色の実が映える実りの秋。柿は栄養価が高く、そのまま食べてもよし、干してもよし。柿渋は染め物や塗装に、葉はお茶などにも利用される。秋の味覚の代表格、柿
の魅力を探った。

■栄養満点 秋の味覚の代表格

 柿は7月ごろにハウス栽培が出回り始め、12月ごろまで楽しめる。10月末までは「平核無(ひらたねなし)柿」「刀根(とね)柿」などの渋柿が主流。渋みの元はタンニン。渋柿はアルコールや二酸化炭素で渋抜きしてから出荷される。「富有柿」に代表される甘柿は11月が旬だ。仙台市中央卸市場(若林区)に入荷する大半が和歌山県と奈良県産という。

 青果卸の仙台あおば青果(若林区)の常務取締役の鷲尾光一郎さんによると、へたが青く、果実に張り付いているものが新鮮で、果皮がオレンジ色で張りやつやがあり、見た目よりもずっしりと重みを感じる柿はおいしいという。果皮の赤みが強いと熟していて柔らかめ。冷蔵庫に入れず、常温の涼しい所に保管する。

 ビタミンCやベータカロテン、カリウム、食物繊維などの栄養が豊富で、風邪予防や腸内環境を整えるなどの効果が期待できる。鷲尾さんは「柿は年配の人に好まれている傾向があるが、栄養価が高いので、ぜひ若い人たちも食べてほしい」と話す。

11月ごろから出回り始める甘柿の代表品種「富有柿」。ふっくらと丸みのある実は糖度が高く「甘柿の王様」と呼ばれている

■革製品のよう 柿渋の古新聞バッグ ~ゆり工房~

柿渋を塗ったバッグは徐々に色が濃くなる
名刺入れの留め具部分には柿の種が付いている
養蚕の守り神「猫神様」にちなみ、猫をモチーフにした作品も多い

 光沢のある茶色が革製品のような風合いのバッグ。実は古新聞を編んで丁寧に柿渋を塗り重ねたもの。丸森町の柿渋細工「ゆり工房」のエコクラフトアーティスト佐藤ゆり子さんが考案した。防水もバッチリという。

 工房には、アイデアが豊富な佐藤さんが生み出した柿渋細工の帽子やベスト、ブックカバー、アクセサリーなど多彩な作品がずらりと並ぶ。革製品に塗り、撥水(はっすい)やつや出しに使う若い柿渋液「みどりのつや太郎」(600円)も販売する。

 まだ青い柿のしぼり汁を発酵させて作った柿渋には防水効果の他、防虫、抗菌などの作用がある。工房は2019年の台風19号豪雨で浸水したが、柿渋を塗った柱や壁は防水やカビ防止の効果が確認できたそう。

 佐藤さんは「柿渋は昔から薬として使われるなど体にいい。現代に合うようにアレンジを加えながら、自然になじむ作品を目指しています」と意欲的だ。

 柿を余すことなく活用する佐藤さん。台風被害を受けた後、家に残っている乾物で作れるレシピとして考えた「干し柿入りの赤飯」を頂いた。甘い干し柿が程よいアクセントを効かせたアイデア光る味わいだった。

今年作った柿渋はまだ色が薄い
柿渋細工のアクセサリーがすてきな佐藤さん

【DATA】
宮城県丸森町金山狢討(むじなうち)57-15
TEL090-2271-8217
営/月~金曜9:30~15:00
※柿渋細工作りの体験教室も行う(要予約)

■残され柿を有効活用 ~干し柿屋~

収穫のワークショップの様子(干し柿屋提供)。地球温暖化の影響で柿が早めに色づくものの、干すには気温が高く、作るタイミングが難しくなっているという
皮むきのワークショップの様子(干し柿屋提供)

 ライフスタイルの変化や高齢化などを背景に、収穫されずに残される柿「残され柿」を有効活用して地域資源にしようと活動する有志がいる。干し柿が好きな「ホシガキスト」の集まり「干し柿屋」だ。残され柿は野生動物の誘引物となる懸念もあり、住民から要請があれば駆け付けて収穫する。

 太白区秋保や村田町などで収穫した800~900個の柿は、例年11月に仙台市内でワークショップを開いて一斉に皮をむく。「おばあちゃんが作っていたので懐かしい」「干し柿が好き」という親子らが楽しんで参加してくれるそう。

 干し柿屋の早川昌子さんは「みんなで皮むきをしながら会話する時間はとても豊かな時間」と振り返る。干した柿が日々変化していく風景もお気に入りという。

 出来上がった干し柿は12月中旬に販売予約を受け付ける。秋保の店舗や栗原市のパン屋の協力を得て、ジェラートやドイツ伝統のパン菓子「シュトレン」に生まれ変わったことも。「干し柿は地味だけれど、他の食材とのマリアージュが楽しめる」とレシピも発信している。

▷干し柿屋に聞く 作り方

▷オススメ 干し柿のコーヒー漬け

(干し柿屋提供)

[材料]硬めの干し柿、コーヒー
    (ともに適量)
[作り方]
❶干し柿のヘタを切り落とす
❷ジャムの空き瓶に干し柿を入れる
❸干し柿が隠れるまでコーヒーを入れる。漬け時間はお好みで

 朝漬ければ、夕方にはいい感じになるそう。甘くなったコーヒーは牛乳を加えてカフェオレに。レシピは秋保のカフェを併設するガラス工房 尚(しょう) に教わったという。

【DATA】活動や販売の情報はこちら
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Webサイト

■干し柿とクリームチーズ(380円) ~Girafe Repos~

 仙台市青葉区中央のパン店Girafe Repos(ジラフ ルポ)で、根強い人気がある一品。ほんのり甘い干し柿とクリームチーズの塩気は相性抜群。白ごまがのったクルミが練り込まれたバゲット生地にたっぷりと挟んである。口溶けの良さを考え、干し柿の甘さを引き立てる酸味のあるクリームチーズを合わせた。発売当初は季節商品だったが、通年商品に昇格した。

 干し柿をメインに、イチジクのワイン煮、栗、カシスなどが入った「オータムシュトーレン」(1800円)は、秋の味覚を存分に楽しめる。販売は11月末まで。

【DATA】
仙台市青葉区中央1-7-18 日吉第一ビル1階
TEL080-6934-5393
営/11:00~17:30
  ※売り切れ次第終了
休/月曜(祝日の場合は営業、翌火曜休み)

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■柿のタルト(520円) ~マーガレット菓子店~

 季節の食材を生かしたタルトと焼き菓子がそろう太白区長町のマーガレット菓子店の「柿のタルト」は、晩秋にしか出合えない季節商品。表面は程よく熟した生の柿がとても色鮮やか。サンドした生クリームの中にはソテーした柿を使う。スポンジ生地も重ね、アーモンド生地にはクルミが入り、食感も豊かだ。

 柿自体が味を主張する果物ではないため、クリームや生地などに負けてしまいがちというが、古くからの国産の果物で日本ならではの洋菓子を追求。調和の取れた秋らしい一品だ。11月末まで味わえる。

【DATA】
仙台市太白区長町4-3-13-101
TEL022-797-7219
営/10:00~19:00
休/月・火曜(祝日の場合は営業)、臨時休あり

Webサイト

(河北ウイークリーせんだい 2024年11月21日号掲載)

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