祝・新年【特集】集まれ 縁起物
新しい1年を穏やかに過ごせますように―。いにしえより人々は「縁起物」に願いを託し、めでてきた。2025年最初の巻頭特集は、東北の伝統的な手仕事から生まれた、福を呼ぶ品々が大集合。東北土着の文化に詳しい「カネイリミュージアムショップ6」(仙台市青葉区)店長の伊藤和輝さんに解説してもらった。
※紹介する縁起物は手作り品のため、売り切れの場合もある。価格は店頭で確認を
■日本三駒
かつて良馬の産地だった東北には、馬の形をした郷土玩具が数多く存在します。中でも「木下駒」「八幡馬」「三春駒」は日本三駒と呼ばれ、名玩具として愛されています。少し気が早いですが来年は午(うま)年。今年のうちに三駒を集めてみませんか。
・木下駒(宮城・左) ~子の健やかな成長祈願~
多賀城に国府が置かれた奈良・平安時代、若林区木ノ下にある陸奥国分寺薬師堂の境内で朝廷に献じる馬を選ぶ馬市が開かれていました。その良馬をまねて木で馬を作り、薬師堂や竹駒神社(岩沼市)の祭礼で販売したと伝わります。現在は太白区の「工房けやき」で作られています。
〈DATA〉工房けやき
※販売店舗は工房けやきのWEBサイトで確認を
仙台市太白区東中田2-15-1
TEL022-242-8090
・八幡馬(青森・中央) ~子や家族の幸せ祈願~
馬産地として有名な青森県の南部地方に古くから伝わる木彫りの民芸品で、元は子どもの玩具でした。馬は神事と関わりが深く神聖な動物とされることから縁起物として広まり、現在は結婚や新築などの祝い品、記念品としても使われます。モダンなデザインの模様は、見れば見るほどすてきですね。
〈DATA〉八幡馬
※WEBサイトから購入可能
青森県八戸市沼館2-5-2
休/土・日曜、祝日 営/9:00〜17:00
TEL0178-22-5729
・三春駒(福島・右) ~子宝・安産・子育てのお守り~
「三春駒」はもともと三春藩で産出される良馬を指しました。人々は売られた馬の健康を願い神社へ木馬を奉納。一方、坂上田村麻呂にまつわる伝説を由来に、木馬型の子育てのお守りも伝わっていました。これらが結びつき、郷土玩具の三春駒が誕生。宮城の木下駒と似ている点が多く、いつか関係性を調べてみたいものです。
〈DATA〉デコ屋敷 大黒屋
※WEBサイトから購入可能
福島県郡山市西田町高柴舘野163
休/水曜 営/9:00~17:00
TEL024-981-1636
■湯沢の犬っこ(秋田) ~泥棒よけ~
昔、村で暴れまわった盗賊を湯沢の殿様が退治しました。「もう泥棒が現れないように」と、小正月の晩に犬や鶴亀のしんこ細工(米粉を蒸して固めた人形)を門口や窓に備えさせました。これが「犬っこまつり」の始まりです。現在は保存が利くよう樹脂粘土製のものが湯沢市観光物産協会で販売されています。
〈DATA〉湯沢市観光物産協会
※代金引き換えで地方発送にも対応
秋田県湯沢市柳町2-1-44
休/土・日曜、祝日 営/9:00~17:00
価格/阿形、吽(うん)形があり、各2420円
(阿形は欠品中)※写真は吽形
TEL0183-73-0415
※今年の犬っこまつりは2月8日(土)・9日(日)開催
■腰高虎(福島) ~無事の帰還祈る~
三春藩では藩が玩具づくりを奨励して工人集落が生まれ、高い技術が現在まで伝承されています。張り子の腰高虎は、見開いた目に大きな口、ピンと跳ね上がったヒゲと尻尾で、虎の勇壮さが表現されています。「虎は千里行って千里帰る」のことわざから、旅などから無事に戻るようにとの祈りが込められています。
〈DATA〉デコ屋敷 大黒屋
※WEBサイトから購入可能
福島県郡山市西田町高柴舘野163
休/水曜 営/9:00~17:00
TEL024-981-1636
■赤べこ/獅子舞赤べこ(福島) ~疱瘡よけ~
400年前の大地震で倒壊した福島県柳津町の柳津円蔵寺虚空蔵堂を再建する際、赤い牛(べこ)が木材を運んできたという伝説があります。その赤いべこにあやかって張り子が作られました。赤は疱瘡(ほうそう、天然痘)よけのおまじないで、郷土玩具によく見られる色。現在では多彩なデザインの赤べこも多く、マニアの心がくすぐられます。
〈DATA〉野沢民芸 七日町店
※WEBサイトから購入可能。獅子舞赤べこはスタイルが異なる大・中・小を販売。中は七日町店でのみ販売
福島県会津若松市七日町9-1
営/10:00~15:30 休/WEBサイトで確認を
TEL0241-45-3129(平日13:00〜17:00)
■鷽(宮城) ~厄よけ・招福~
全国の天満宮では、「旧年中の災厄をうそにして幸運に替える」ことを祈願する「鷽替え神事」が行われ、個性的な一刀彫の鷽が頒布されます。榴岡天満宮では全国で唯一“笑顔”の鷽を頒布。10体に1体の割合で「真っ赤な鷽」が当たるので運試しにも。根付タイプや、今年初登場する大きな「真っ赤な鷽」も気になります。
〈DATA〉榴岡天満宮
仙台市宮城野区榴ケ岡105-3 休/無休 営/9:00~16:30
初穂料/根付1000円、鷽1500円(各日400羽)、大きな真っ赤な鷽 中(各日25羽)3500円、大きな真っ赤な鷽 大(5羽)8000円
TEL022-256-3878
※1月14日(火)・25日(土)に行われる「鷽替え神事」で9:00から頒布
■弾き猿(宮城・奥)~厄よけ~ と 早波舟(宮城・手前) ~航海の安全~
(弾き猿)
竹のばねを弾くと猿が跳ね上がって「災いを弾き去る(猿)」という厄よけの縁起物で、早波舟と共に販売されます。「福がクルクル回り来る」との願いが込められた飾りの風車は、竹の皮を細く割いて組んだもの。地元名人の熟練の技が光る希少な品。1年の災厄を弾きとばし、運気をピョーンと上げられそうですね。
(早波舟)
気仙沼市の唐桑半島で、漁業の神様として信仰される御崎神社の例大祭で販売されます。大嵐の日、漁船から乗組員が小さな「さっぱ船」に乗り換えると、御崎神社のお使いである白いクジラに導かれ助かったことから、簡素な船の模型を奉納したのが始まりと伝わります。近隣の漁師が購入し、航海のお守りにするそうです。
〈DATA〉唐桑半島ビジターセンター
気仙沼市唐桑町崎浜4-3
休/火曜(祝日の場合は翌日)
営/9:00~16:30
TEL0226-32-3029
■蘇民将来(宮城) ~疫病よけ~
六角柱や八角柱に削った木に「蘇民将来」と記した疫病よけの護符。「蘇民将来子孫の札」を門に貼ると子孫代々厄病を免れたという故事から生まれました。陸奥国分寺薬師堂のものは本体の長さが2.5㎝と極小サイズで、技の細やかさに驚かされます。「ソミンソーライ」のカタカナ書きも他にはない特徴です。
〈DATA〉陸奥国分寺薬師堂
仙台市若林区木ノ下3-8-1
休/無休 営/9:00~15:30
頒価/1000円(寺務所で頒布)
TEL
TEL022-256-1883
■金魚ねぷた(青森) ~金運・幸福~
津軽藩の殿様は金魚が好きで、家臣は金魚の改良に熱を入れ独自の品種「津軽錦」を生み出しました。ただし、それは上流階級にしか手に入らない高級魚。庶民は艶やかなその姿に憧れ、灯籠の「金魚ねぷた」を作り始めたそうです。美しい造形や鮮やかな色使いに、津軽人ならではのセンスと美意識が感じられます。
〈DATA〉津軽藩ねぷた村
※WEBサイトから購入可能
青森県弘前市亀甲町61
休/無休
営/9:00~17:00
TEL172-39-1511
■忍び駒(岩手) ~縁結び~
稲わらで作った馬の人形で、ピンと立った尻尾がりりしいですね。岩手県花巻市にある円万寺観音堂に伝わる風習では、恋愛成就などを祈願してわら馬を作り、人目を忍んで供えました。願いがかなうと、お礼に色布や鈴で美しく飾って再び供えたそうです。今は縁結びや子孫繁栄、五穀豊穣(ほうじょう)のお守りとして愛されています。
〈DATA〉小田島民芸所
※WEBサイトから購入可能
岩手県花巻市材木町10-20
休/土・日曜、祝日 営/9:00~17:00
TEL0198-23-4856
■お鷹ぽっぽ/古代ぽっぽ(山形) ~悪霊よけ・商売繁盛~
1000年以上の歴史を誇り、山形県米沢市に伝わる「笹野一刀彫」のシンボル的存在で、名君・上杉鷹山にちなんだ木彫りの鷹。「ぽっぽ」はアイヌ語で玩具を意味するという説も。サルキリという大きな刃物一本で、巧みに繊細な細工を施します。3人の地元出身者による「おたか3兄弟」が、昔作られていたお鷹ぽっぽの姿や絵柄を再現した「古代ぽっぽ」を制作するなど奮闘中です。
〈DATA〉笹野民芸館
山形県米沢市笹野本町5208-2
休/火曜 営/10:00~16:00
TEL0238-38-4288
※おたか三兄弟の作品はWEBサイトで確認を
▶カネイリミュージアムショップ6 店長・伊藤 和輝さん
(河北ウイークリーせんだい 2025年1月9日号掲載)
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