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味わい変化【特集】ドライなグルメ

 果物や野菜、魚など乾燥させると味わいに変化が生まれたり、おいしさがアップしたりする食材は多い。そんな味わい深い食品を取材した。

■フルーツ■ドライ無添加でおいしさ濃縮、サングリアベースも ~BLUE BLUEBERRY FARM~

左から交互にサングリアベースとノンシュガーフルーツティー。「果樹園の中で飲んでいる気分 サングリアベース」(左)は「フルーツ感たっぷりでサングリア好きの人が好む味」(山寺さん)という。85g1180円。ノンシュガーフルーツティーは480円

 無添加で乾燥し、食材の味をギュッと濃縮させておいしさを引き出す。BLUE BLUEBERRY FARM(仙台市太白区秋保町)が手掛けるのは宮城県産を中心にした季節の果物だ。「生産農家の気持ちが伝わるよう、商品名も工夫しています」と同ファーム園主の山寺豪さんは話す。例えば「結城果樹園さんが樹上完熟させた宮城県亘理産の甘いリンゴのドライフルーツ」といった具合だ。

 果物は形が悪いと規格外になったり、取れ過ぎて仕分けが追いつかなかったりすると廃棄されてしまう。山寺さんはそんな果物を積極的に利用する。「フードロス対策にもなります」と山寺さん。自社のドライフルーツを扱ってもらっているスーパーの見切り品を仕入れ、原料が見切り品であることを明記して販売するケースも。

 追求するのは「ドライフルーツの可能性」(山寺さん)という。専門家のアドバイスを受けながら、ミカンやリンゴ、イチゴといったドライフルーツにてんさい糖とスパイスを加えたサングリアベースを開発した。山寺さんは「生の果物を使うとワインが水分で薄まるけど、ドライフルーツはワイン感そのままに果物の味が乗る。ぜひ試してみてください」とPRする。

ドライフルーツは(左から)ブルーベリー(30g、1350円)、リンゴ(40g、820円)、カキ(35g、540円)。ヨーグルトに入れて食べてもおいしい
赤ワイン300㎖にサングリアベースを入れると濃厚な味わいに
山寺豪さん
イベント出店やオンラインでの購入はこちらから(実店舗なし)

■乾燥野菜■手軽な食材 中華や洋食に ~ゴリラファーム~

乾燥させた(上から時計回りに)たまねぎ、とまと、長ねぎ

 トマトはうまみが濃厚に、タマネギは甘みが強くなり、エノキダケは魚介類のようなうまみが加わる。「乾燥させることで日持ちもして手軽に料理に使うことができます」。乾燥野菜やリンゴの加工販売を手掛けるゴリラファーム(仙台市泉区)代表の高橋まち子さんはこう話す。

 加工する野菜は主に宮城県産で、種類は季節によって異なる。冬場はハクサイ、キクイモ、大根など。素材に合わせてカットや乾燥させる温度、時間を工夫しているという。

 レギュラー商品は「ねぎ&なめこ」「ねぎ&えのき」「みそ汁ミックス」(いずれも20g)、「たまねぎ&えのき&とまと」「たまねぎ&えのき」(同25g)。売れ筋は「ねぎ&なめこ」とか。「中華のあんかけに使うとおいしいです」と高橋さん。「たまねぎ&えのき」はグラタンやコンソメスープといった洋食メニューにぴったりという。

 乾燥りんごを使った英国の伝統菓子・トフィーは仙台市産業振興事業団のアドバイスを受けて開発した。名付けて「ごりごりんご」。味見させてもらう。リンゴの酸味とアーモンドの香りがマッチした逸品だった。

乾燥りんごを使った「ごりごりんご」。缶ケースの10本入りは1080円、7本は648円
「ねぎ&なめこ」などのレギュラー商品はいずれも540円
高橋まち子さん

仙台市泉区野村字野村95-2
TEL022-725-7401
営/9:00〜17:00
休/土・日曜、祝日

購入やECサイトはこちらから

■干物■身厚のサバやホッケ しっかり塩漬け 丁寧に乾燥 ~間宮商店~

間宮商店担当者がイチ押しの金華さば定食1900円。上品な脂がたまらない。ハーフサイズ(1300円)もある

 宮城県塩釜市の塩釜水産物仲卸市場のほど近くに店舗を構える干物製造販売の間宮商店。身が厚いサバやホッケなどの干物が評判で、宮城県内はもちろん豊洲市場(東京)や東日本のスーパーなどから引き合いがある。

 「刺し身でもOKな鮮魚をしっかり塩漬けして、丁寧に乾燥させて干物にします」と同社代表の間宮徳昭さん。原料の魚は、東京の築地市場で競り人を務めた経験がある間宮さんが目利きして仕入れる。

 理想的な火加減で焼いた干物を、羽釜の炊き立てご飯の定食で食べてほしいという思いを込め、仲卸市場に開業したのは間宮商店食堂部だ。干物は注文を受けてから、スチームと熱風を使ったオーブンで8割方火を通し、溶岩を使ったグリルの遠赤外線でパリッと焼き上げる。

 「朝から昼食時までの営業で300食ほど出ることがあります。『若者の魚離れ』といわれますが、若いカップルが食べに来ることが多いです」と間宮さん。「品質には自信があります。魚が苦手な人にこそ食べてほしい」と話す。

干物は(左から)金華サバ半身甘粕漬(518円)、塩紅鮭切身(970円)、真ホッケ半身醤油干し(710円)
ちょっぴりぜいたくな「うみ茶漬け」シリーズは770円から。干物の切り身がゴロっと入っている
間宮徳昭さん

間宮商店直販所
宮城県塩釜市新浜町1-21-8
TEL0120-031738
営/平日9:00〜13:30、土・日曜、祝日9:00〜14:00
休/水曜

羽釜ごはんでたべる間宮商店食堂部
塩釜水産物仲卸市場内
営/平日8:00〜13:00、土・日曜、祝日7:00〜14:00
休/水曜

商品購入はこちらから
間宮商店食堂部についてはこちらから

■へそ大根■ 丸森町筆甫地区特産 天日でうまみギュッと

宮城県丸森町筆甫地区特産のへそ大根作り

 山間部に位置し、夜は冷え込みが厳しい宮城県丸森町筆甫地区の冬の特産品「へそ大根」。輪切りにした大根をゆで、串刺しにして天日にさらすと夜は凍み、日中は解けることで水分が抜けてうまみが凝縮される。同地区でへそ大根作りを手掛ける生産者団体代表の目黒正紀さんは「3週間天日干ししたら室内で乾燥させて仕上げます。煮つけが一般的だけど、ポトフやポタージュでもおいしい」と教えてくれた。

 真ん中の穴がへそに見えるから名付けられた。目黒さんらが手掛けたへそ大根は、みやぎ生協などで2月ごろから販売が始まる。

地元住民が商品化した「へそ大根 ざくうま 甘酢南蛮味」(120g、500円)。筆甫地区の直売所「ひっぽのお店 ふでいち」で販売中だ
目黒正紀さん
へそ大根の戻し方やレシピはQRから

■利用価値アップ 防災食にも ~宮城学院女子大食品栄養学科准教授・済渡(さいと) 久美さん(分子調理学)に聞く

栗原市生まれ。宮城大で博士号取得後、現職

 食品の加工は保存性を増すという目的を含めて、利用価値を高めるという役割も担ってきました。乾燥も食品保存の1つの手段。水分を除去することで微生物の繁殖を阻止します。食品中の水分量が減ることで成分が濃縮され、うまみアップにつながります。

 ドライフルーツはそのままでもよいですが、ヨーグルトに交ぜておくと、ヨーグルトの水分(乳清)が染み込んでやわらかくなり、新しいおいしさの発見につながります。生の柿と干し柿を比べると(100g当たりの食品成分表値)、うまみ成分であるアスパラギン酸とグルタミン酸はいずれも約3.6倍にアップします。

 同じくブドウは干しブドウにするとアスパラギン酸は約42倍、グルタミン酸は約2倍になります。

 魚も干すことにより保存性は増します。ただ塩分が多いので、大根おろしと一緒に食べるなどして食べる量を調整してください。

 家庭で手軽にできるのは乾燥野菜作りです。買い過ぎたタマネギやシイタケ、捨てていた大根の皮を干せば食品ロスにつながるし、長期保存できるおいしい食材に生まれ変わります。

 干物を上手にローリングストックしていけば防災食にもなります。大規模災害発生時の体の調子を整えるために重要な食物繊維の供給源になります。

(河北ウイークリーせんだい2025年2月6日号掲載)

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