街路樹が成長しすぎて…宮城で苦情相次ぐ 「落ち葉が邪魔」「根が排水管を詰まらせる」

新緑の芽吹きなど季節の移ろいを知らせる街路樹の存在に、近隣住民が頭を悩ませる状況が宮城県内のあちらこちらで生まれている。秋には大量の落ち葉の掃除に追われ、伸びてきた根が原因で排水管が詰まることも。住民の高齢化に伴い掃除などが負担になり伐採に至る例もある。
(せんだい情報部・山田有紗)
住民高齢化→掃除が負担→伐採も
利府町中央の県道に面した住宅で暮らす無職の女性(55)は毎秋、街路樹のケヤキの落ち葉掃除や伸びた枝の対応に追われる。「大変な作業だが、少し離れた家の人は全く知らない問題になってしまう」と嘆く。
県道の約500メートルの区間に30本のケヤキが植えられたのは30年ほど前。女性宅では10年前、ケヤキの根が原因でトイレの水の流れが悪くなった。これまでに同様の被害は近隣で6件あった。県内で排水設備工事などを手がける業者によると、排水升に街路樹の根が入り込みトイレの詰まりの原因になることは少なくないという。
女性の苦情を受け、県道を管理する県仙台土木事務所は昨秋、女性宅の前のケヤキ1本を撤去した。女性と同様の被害を訴える住民は他にもおり、町内会が2022年に区画全体の伐採願い書を仙台土木事務所に提出したが、正式な回答はないままだ。
女性は「家の前の木だけ切られても、落ち葉はどこからともなく庭に入ってくる。木を植えた人たちは30年後の成長を考えていただろうか」と投げかける。
県道を管理する県内の7土木事務所によると「車での見通しが悪い」「歩道が根で盛り上がっている」といった街路樹に関する相談が年に数件寄せられるという。
自治体や専門家「景観も考慮して合意形成を」
街路樹は道路を管理している自治体が所有して状況に応じ剪定(せんてい)などを行い、落ち葉掃除については住民が担うことが多い。宮城野区内の町内会では、落ち葉掃除を担っていた住民の高齢化に伴い、市道のシラカシの伐採を市に要望。区の担当者との話し合いを経て昨年8月、根元を残して7本が伐採された。
ただ、行政側は要望があれば全て伐採するわけではない。同区の担当者は「景観などの点で切られることを望まない人もいる。街路樹の近くに住む人と、それ以外の人の間で合意形成を図るのが難しく、個人の意向だけに基づいて動くことはできない」と話す。
街路樹に詳しい兵庫県立大自然・環境科学研究所の赤沢宏樹教授(緑地計画)は「街路樹には、子どもが緑に触れる教育的効果や地価への波及効果など計り知れない価値がある」と説明。ただ、枝や根の民有地への侵入などの苦情は全国的に多いという。伐採などを巡って住民同士がもめないよう、賛成と反対、双方の理由を合意形成の最初の段階で確認することを勧める。
「行政は個別に対応するだけでなく、年間の剪定予定や、剪定の要望が多い箇所などのデータを公開すれば、住民同士が協働する機運にもつながる」と話す。

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