街路樹が巨木化、街灯の光遮る 高度経済成長期に開発の郊外住宅地

 「街路樹が陰になり、街灯の明かりが届かず歩道が暗くて危ない」。川崎市のパートの女性(54)から、神奈川新聞(横浜市)の「追う! マイ・カナガワ」取材班に指摘が寄せられた。横浜市の女性(81)からも「街路樹が育ち過ぎて街灯を遮っている。電線も越えており、危険ではないか」という声が。いずれも郊外の大規模な住宅地だが、街路樹に何が起きているのか。

生い茂る葉の間から明かりをともす道路照明灯=川崎市宮前区

 記者は、東急田園都市線宮崎台駅(川崎市宮前区)近くの住宅街に向かった。マンションやアパートが並ぶエリアの車道と歩道の境界に大きな木が並び、生い茂る葉が、街灯の光を遮っている所もある。

 夜8時ごろ、確かに歩道が暗いと感じる場所もあった。女性は「暗くなると、前から来る人も分からないくらい。なぜ樹木より下に明かりをつけないのでしょうか」と訴える。

 どういうことなのか、同市道路施設課に聞いた。

 「この街灯は道路の交通安全のための道路照明灯です。幹線道路や事故多発地点に設置して主に車道を照らしています」。国の基準で道路全体をむらなく明るくするためには高さが必要で、この場所では10メートルだった。もっと低い位置で電柱などに「防犯灯」を設置する方法もあるが、ほかの屋外照明と離れているなどの条件もあり、既に道路照明灯があるような広い道路での設置はなかなか難しいようだ。

 横浜の女性が声を寄せた、京急線金沢文庫駅(横浜市金沢区)からバスで約10分、釜利谷西地区も確認した。

 一軒家が並ぶ住宅地で、多くの街路樹が電線の高さを越えて成長していた。30代の頃から半世紀近く、この地で暮らす女性は「最近は台風の威力も増していて、倒木で停電する可能性もある。街の美観より安全を優先し、小さな木に植え替えた方が…」と口にする。

 記者が訪れた宮崎台や釜利谷をはじめ県内の私鉄沿線は、その多くが1950~70年代ごろに開発された。高度経済成長期の人口増に伴い、夢のマイホームを求めて郊外の住宅地が形成され、働き盛りの若い世代が全国から移り住んだ。

 長い年月の間にユリノキやプラタナスなどの街路樹は大きく育った。横浜市施設課によると、「高度成長期に大量植樹された街路樹は、巨木化しやすい種類が多い」という。緑あふれる街を急ピッチで作る必要があったのだろう。

一軒家が並ぶ郊外住宅地に植えられた街路樹。電線の高さを越えて大きく成長している=横浜市金沢区

倒木や通行障害が各地で表面化

 取材を進めると、昨年度だけで宮前区の道路公園センターに約120件の剪定(せんてい)要望があり、金沢区の土木事務所でも要望を受けた剪定が約60件に上ることが分かった。

 さらに樹木の高齢化もあって、倒木の危険性、通行障害などの問題が近年、各地で表面化してきている。両市とも、樹木の植え替えや撤去などを緊急性の高いものから順次進めているが、「巨木化していても、健康な木の場合は自然保護の観点もあり、道路事情だけですぐに伐採するわけにもいかない」(同課)という問題もあるようだ。

 郊外のまちづくりに詳しい横浜市立大の斉藤広子教授に聞くと、「大きな木は魅力でもあるが、安全や防犯など多面的に考えることが大切。街路樹の議論をきっかけに、街の魅力アップにもつなげられるといいのでは」との提案があった。

 空き家や高齢化問題なども抱える郊外住宅地だが、「新型コロナウイルス禍で在宅勤務が進んだことで再び人気が高まっている」という。街のシンボルとして地域で親しまれてきた面もある街路樹が悪者にならない解決策を探したい。
(神奈川新聞提供)

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