<まちかどエッセー・氏家靖浩>ラブ・ストーリーは突然に

うじいえ・やすひろさん 1966年大崎市生まれ。古川高、宮城教育大卒業。現在、仙台大体育学部健康福祉学科教授。博士(医学/香川大)。公認心理師、精神保健福祉士、学校心理士。千葉ロッテマリーンズファン。仙台市青葉区在住。

 「仙台で電球の祭りが始まる」と私が知ったのは、青葉山で大学生だった昭和の終わりのことでした。私は、夏の七夕飾りに電球を付けると思いましたが、それは間違いでした。この祭りは今のSENDAI光のページェントのことです。
 はっきり申し上げて、ページェントには良い思い出がありません。最初は青葉通にも電球が飾られ、帰宅のバスは渋滞に巻き込まれ、夜のアルバイトに遅刻しました。電球を見つめる楽しそうな人々の顔を恨めしく思いました。
 時効なので記しますが、渋滞のバスの車内、私は運転士さんの真後ろの座席で熟睡していて、運転士さんに気付かれずに終点の仙台駅前で降ろされないまま回送となったバスに乗っていたこともあります。恋人たちがまばゆい光を見つめて歓声を上げている傍らで、私は運転士さんと2人でため息をつきながら営業所までドライブしていたわけです。
 このように、良い思い出がなかった光のページェントの印象が突然変わる日が来ます。
 30代になり福井県の大学に教員として赴任しました。そこで、ある方が「冬にまばゆい電球を見つめるロマンチックなイベントは、神戸ルミナリエが日本一」と話すのを聞いて、私は心の中で「なぬすや!?」と思ったわけです。
 ルミナリエも良いでしょうが「歴史的にも市民のイベントとして、SENDAI光のページェントのほうが、上だよ」と演説を始め、私は一気にページェントの応援団になったのでした。
 仙台から遠く離れた福井にいて、しかも10年以上たって、ようやく昭和のページェントの光が私の心に届いたように思います。暮らしている場の良さに気付くのには、少し離れてみることが必要なのかもしれません。
 名曲「ラブ・ストーリーは突然に」を歌う小田和正さんも、東北大で学んだ学生時代の思い出は自動車学校ととんかつ屋さんで大学には思い出がないと語っていました。でも最近になって東北大の校友歌を作られています。ありがたさに気付くのには、時間もかかるのでしょう。
 今年のページェントは「電球は密に、そして離れた所から人々は心を密に」して光を見つめましょう。
(仙台大教授)

まちかどエッセー

 仙台・宮城在住の執筆者が、それぞれの活動や暮らしで感じたことをつづります。

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