岩手県宮古市にある共和水産の専務鈴木良太さん(39)はかつて、地元にも水産業にも魅力を感じていなかった。
仙台の大学に進み、東北随一の繁華街国分町のダイニングバーでアルバイトを始めた。「ホストになったらしい」。地元でうわさが飛び交った。「ピアスをしていたし、伝言ゲームでそうなったのかも」と笑う。
実際は客単価の設定やメニュー作りといった経営の中枢に携わり、モノを売るための経験を積んでいた。「ニーズとは何か、常に考えるようになった」。これが、後に生きる。
2005年、父が創業した会社の後継者として帰郷した。だが、もう一度都会に出る気でいた。「このまま終わりたくない」。若さ特有の情熱を持て余す日々に終止符を打つ時が不意に訪れた。
東日本大震災。岩手県大槌町にあった倉庫が津波で被災し、製品や原材料が流された。被害総額は1億3000万円。幸い人的被害は免れ、工場も無事だった。一方で、倒産に追い込まれた同業者仲間がいた。親を失ったのか、泣きじゃくる子どもも見た。胸が張り裂けそうになった。
震災前は社業が順調ならそれで良かった。マイナスからの立て直しを余儀なくされた古里の光景に、やるべきことが明確に見えた。
「震災前から水産業は後継者不足が進み、漁獲量も低迷していた。海の魅力を伝えるには、自分がもっと知らないと」。課題が山積する基幹産業の再興へ、三陸全体を視野に旗振り役となる覚悟を決めた。
共和水産は宮古港に揚がったイカを中心に商品を製造、販売している。PR強化へ11年夏、自らを「イカ王子」と称したブログを開設した。
「『鈴木専務のブログ』よりインパクトがある」との読みは的中。インターネットの販売サイトから声が掛かり、考案した「イカ王子の作る真いかぶっかけ丼」は売り上げ全国3位という大ヒット商品になった。
「1位はミネラルウオーターで、2位はUSBメモリー。よく分からないランキングだった」。宮古発の明るい話題は、傷ついた市民をもり立てた。
さらに地元の水産加工業者4社で12年6月、「宮古チーム漁火(いさりび)」を結成した。根底には自分たちが魚を誘う光になり、宮古の水産業に温かい火をともす-という志がある。
イカ、サンマ、サケ、ウニ…。各社の主要海産物の取引先を共有し、共に商品開発を進めた。競合するはずの「個」の連携は、全体で震災前の4倍に及ぶ業績の伸びをもたらした。
「経営者ならではの悩みを語り合うこともある。お金以上の価値があり、共に成長できるのは大きい」
北米や東南アジアなどの海外進出にも意欲的だ。「世界三大漁場の三陸は、意外に知られていない。築地に負けないよう知名度を高めたい」
トレードマークの冠をかぶると「王子」に早変わり。「でも、本業は魚本来のおいしさを伝えること」。強い思いを胸に、辣腕(らつわん)を振るう。
(佐々木貴)
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