福島第1原発処理水の海洋放出表明は21年に持ち越し 政権、早期決着果たせず

福島第1原発の構内に林立する処理水の保管タンク

 東京電力福島第1原発の放射性物質トリチウムを含む処理水を巡り、政府は既に方針を固めている海洋放出の表明を2021年に持ち越した。内閣支持率の低下などを背景に当初狙った早期決着は果たせず、焦りを募らせる官僚との温度差もうかがえる。これまで先送りされ続けてきた政府の難題が、最終局面で長期化含みの様相を見せている。

 19日に就任後初めて第1原発周辺自治体を視察した加藤勝信官房長官は、報道各社の取材に「政府として適切なタイミングで責任を持って方法や時期を決めたい」と述べた。
 菅義偉政権の誕生から3カ月余り。処理水に対する政権のスタンスは定まらなかった。
 「できるだけ早く、政府として責任を持って処分方針を決めたい」。菅首相は9月26日に福島入りした際に早期決着への意欲を鮮明にしていた。
 しかし確実視された「10月決定」が世論の強い反発で見送られると一転。風評被害対策の議論を深める向きを強調した。政権幹部の発言からは「できるだけ早く」が消え、最近はもっぱら「適切な時期に」が使われる。

 政権は処理水を喫緊の課題と位置付けてきた。日々発生する処理水のタンクが敷地を圧迫し、対応が遅れれば廃炉全体に重大な支障を来しかねない。関係省庁にはごく最近まで「越年は避けたい。(決断は)年内だ」との「目標」があった。
 だが新型コロナウイルス対応や政治とカネを巡る問題で内閣支持率は急落。解散総選挙への影響を避けようと、自民党内からも「海洋放出以外の当面の処理方法を検討すべきだ」との声が出始めた。17日に勉強会を設置した閣僚経験者ら国会議員有志は「慌てて選挙前に捨てる理由はない」と政府をけん制した。
 先送りの判断には、まだ時間的余裕があることを示す複数の事実が作用しているとみられる。タンクの設置が可能な空き地が見込まれる上、汚染水は発生量が想定より少なく推移。東電が「2年程度」と説明する放出準備期間も実際は短縮の余地が大きい。

 通常国会は来年1月18日に召集され、6月の閉会後は東京五輪が目前に迫る。経済産業省幹部は「国会日程はあまり気にしていない」と言うが、野党の追及は極力避けるのが霞が関の慣例だ。ある政府関係者は、国会召集までに決まらない場合は「方針決定できるタイミングがない」と漏らした。
 当初、今夏ごろが決定期限とみられた政府方針は表明されないまま、原発事故から10年の節目が近づく。
 第1原発の周辺自治体は保管の長期化による復興への影響を懸念し、政府に早期決断を促す。政府は増え続ける汚染水と政治日程をにらみつつ、年明け以降も慎重な判断を迫られる。

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