多賀城市大代1丁目の会社員西村高志さん(62)は、東日本大震災で妻の弥奈(みな)さん=当時(45)=を亡くした。弥奈さんは仙台市宮城野区の勤務先で地震に遭い、車で同区にある実家に立ち寄った後、自宅に向かう途中で津波にのまれたとみられる。
あの日、高志さんは太白区の職場にいた。揺れが長く続き、窓ガラスが割れて落下していた。「津波が来る」。直感した。
午後4時ごろに職場を出た。多賀城市の自宅に向かう道路は通行止め。義母の花渕美弥子さん(81)が住む弥奈さんの実家にもたどり着けず、弥奈さんと連絡が取れなくなった。
弥奈さんの身を案じつつ、スーパーの駐車場で夜明けを待った。「どこにいるの」「大丈夫か」。一晩中、メールを送り続けた。
翌日から弥奈さんの実家に泊まり、自転車で周辺の病院や避難所を訪ねて回った。10キロ離れた宮城県利府町の病院に、丸1日かけて往復したこともある。道はがれきや土砂ばかりで車輪に泥が詰まる。自転車を毎日、掃除して足を運んだ。
「生きていれば、歩いてでも会いに来るはずだ」。そう信じていた。
5日後、利府町の県総合運動公園(グランディ21)の安置所で遺体を見つけた。傷のないきれいな顔を見つめた。「現実なのか」。覚悟はしていても、亡きがらを前にすると、受け入れられなかった。
2人は30年前、当時の職場で出会った。結婚して弥奈さんは専業主婦に。高志さんが職を失うと「私も働くよ」と、自ら進んで仕事を探した。
猫好きの弥奈さんはよく「見ていられない」と野良猫を拾ってきた。震災当時、5カ月前に保護した「エル」をはじめ3匹がいた。震災当日は、猫が心配で自宅に戻ろうとしたのかもしれなかった。
話し好きな弥奈さんを失い、高志さんは趣味の旅行やゴルフも楽しめなくなった。酒量が増え、医師に昨夏「このままだと入院だからね」と告げられた。猫を置いて入院するわけにいかないと、摂生に努めた。
元日の朝、愛猫の「ジム」が21歳で死んだ。静かな旅立ちだった。猫たちの変化に、あの日から止まったままだった10年の月日を実感する。
「いつ弥奈の元に行くか分からないけど、待っててね」。妻の面影を思い浮かべ、猫との暮らしを守り続ける。
(報道部・石沢成美)
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