日常を根底から揺さぶり、多くを奪った未曽有の災禍に時が積み重なる。東日本大震災から間もなく10年。あの日を境に私たちの社会は何が変わり、何が変わらないままなのか。「復興」の先にはどんな未来を描けるのか。東北にゆかりの深い著名人が語る。
<東日本大震災後、岩手、宮城、福島各県の被災地に通って支援を続け、2013年11月に気仙沼市でカフェ「K-port」(ケイポート)を開業した>
震災発生時は米国からの帰国途中だった。成田空港が使えず、乗った飛行機は小松空港(石川県)に降りた。ロビーのニュース映像で、こんな大変なことになっていたのかと知った。
交通網が復旧すると、避難所22カ所を回って生鮮食料品などを届けた。とにかく被災地の人に寄り添いたかった。「自分たちのことを忘れてほしくない」という声をたくさん聞いた。
そうした中、テレビ局の取材で継続的に気仙沼に入るようになり、友達ができた。少し落ち着いた頃、「今、何が一番足りないのか」と尋ねたら、「人が集まる場所が欲しい」と。ただ、建物だけ整備しても、使われず閑散としている状況もよく目にした。常に人がいて、お茶が飲めて、ライブもできるスペースをと考え、カフェを造った。
<オーナーとして、メニューは基本的に自身が開発し、毎日のように直筆メッセージをファクスで送る>
ニューヨークに半年間行ったり、日本でも仕事が立て込んだりして気仙沼になかなか行けない時期があった。店で今何が起きていて何が必要なのか、僕は肌で感じることができない。空気感、雰囲気みたいなものを、いかに維持していくかが最も大変だった。
新型コロナウイルスの流行で中止になったが、昨年12月25日は僕が来店客にフルサービスをする恒例クリスマスディナーの予定だった。月1回ほどのペースで、僕が住む長野県産の肉や野菜、果物と、気仙沼の食材を合わせた料理を振る舞う朝食会も開いてきた。今は(コロナ禍で)ずっと滞っており、再開できるようになるといいなと思う。
僕がケイポートに行ったら「お帰りなさい」と言われる。俳優というよろいみたいなものを全部脱いで、個人に戻れる。自然体でいられる場所になっている。
<20年3月公開の映画「Fukushima 50」で、東京電力福島第1原発事故の収束作業を指揮した吉田昌郎所長を演じた。映画の最後に、東京五輪の聖火リレーが福島県からスタートすると紹介される>
あの事故(原子炉の決定的な破壊)を止めたのは、誰の力でもなく本当にまぐれみたいなもの。僕たちは、タイトロープ(綱渡り)の現代社会に生きているということを認知する必要がある。未来に何を選択していくのか。大事な岐路に立っているのに、「みんな見ないようにしているのはどうなんでしょう」と映画は訴えているんじゃないか。
復興五輪(の大会理念)は、開催ためのエクスキューズ(弁明)のような気がしてならない。だから今度は「コロナに打ち勝った証しとしてやりましょう」、みたいになっている。でも今は、それを話す土壌にもない気がする。もっと地に足が着いたことを考える必要があるのではないか。
どうしても僕たちは(震災から)10年で線を引いてしまうが、被災地に暮らす人たちにとっては一日一日を積み重ねた結果で、10年を迎えた日の昨日とあしたはそんなに変わりはない。前を向いて毎日を生きる彼らを僕たちは見続け、寄り添い続けるしかない。
(聞き手は橋本智子)
[わたなべ・けん]1959年新潟県魚沼市生まれ。87年にNHK大河ドラマで年間平均視聴率が歴代最高の39.8%を記録した「独眼竜政宗」で主人公の伊達政宗を演じる。ハリウッドデビュー作「ラスト サムライ」(2003年)でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。
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