大崎「すずかけの里」運営法人が虐待隠す? 家族・利用者に説明会行わず
宮城県大崎市の障害者就労継続支援事業所「すずかけの里」で2017年以降、複数の男性幹部による虐待行為が計3回発生し、再発を防げなかったとされる問題で、運営する同市の社会福祉法人おおさきさくら福祉会が利用者や家族に詳しい事情を説明していなかったことが7日、分かった。
厚生労働省のガイドラインは虐待事案について謝罪を含めた誠意ある対応をするよう定めている。家族らは「事実関係を隠したことが虐待の続発につながった」と批判する。
宮城県の開示文書などによると、17年7月、当時の男性幹部による心理的、性的虐待が認定された後、法人は同8月に職員に概要を説明した一方、家族らへの説明会は開かなかった。
同12月、別の男性幹部による性的虐待が発生。18年3月、法人は利用者と家族宛てにA4判の文書を配り「ご利用者様との日々の関わりの中で不適切な支援が発生」と謝罪したが、事実関係は記さなかった。
家族の一人は「詳しい説明を求めたら、法人側から『いいかげんにしろ、何で追及するんだ』と激怒された」と憤る。同じ男性幹部が同6月、利用者に「ばか」などの不適切な発言をして心理的虐待が認定された後も、説明会は開かなかったという。
関係者によると、職員の一部は説明会を開くよう提案したが、法人側が聞き入れなかったとされる。当時の理事長だった男性は「大きな問題だと認識できなかった」と話す。
厚労省が20年10月に出した「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引」は「虐待事案の内容によっては法人の理事長等役職員が同席した上で家族会を開き、説明と謝罪を行い信頼の回復に努める必要がある」と規定する。
理事対立、退職者続出 17年間で組織変容
「すずかけの里」を運営するおおさきさくら福祉会は大崎地域の若手経営者らによって2004年に設立された。理事同士の対立などから離脱者や退職者が相次ぎ、17年間で組織は大きく変容したとみられる。
施設は05年に開所し、障害のある利用者らはギョーザや温泉卵などの製造に従事した。当初は売り上げを伸ばして14年度の平均工賃は月2万7200円と、全国平均を大きく上回った。現在も約40人が利用している。
一方、関係者によると、運営方針などを巡って理事同士の対立が表面化。年1回、利用者の家族や経営陣らが情報交換する集まりも開かれなくなり、家族から「情報が入らない」と不満が漏れた。
16年、家族や企業人らで組織する「支える会」が各家族にアンケートを実施。代表が「利用者が人間関係で悩む」「家族に対して職員からパワハラ発言があるのでは」と回答を求める文書を提出したが、男性幹部は「客観性がない」などと説明を拒否したという。
家族らは「情報を隠す体質が度重なる虐待行為を招いた」と不信感を募らせている。
関連リンク
- ・【写真】大崎市の障害者施設「すずかけの里」
- ・虐待や貧困で実親と暮らせぬ子、東北2000人超 厚労省、里親制度の普及図る
- ・「命絶つ人減らす」 仙台の看護師 聖職者による性的虐待被害者を支援
- ・涌谷保育園パワハラ問題 保育士ら、法人に2600万円賠償請求 仙台地裁
- ・山形大パワハラ委、頓挫 調査方法で組合と対立、聞き取り2カ月以上せず