泥だらけのボールにサインもらった少年、あの時のマー君と同じ年に

避難所だった大曲小で田中将投手と記念撮影する坂本さん=2011年4月8日、東松島市大曲
津波で泥だらけになったボールを磨いて手渡し、書いてもらったサインボール
田中将投手のサイン入りグラブを持つ坂本さん(本人提供)

 米大リーグ、ヤンキースからプロ野球東北楽天へ8年ぶりに復帰した田中将大投手(32)は、東日本大震災の支援活動にも熱心に取り組み、多くの被災者を励ました。宮城県東松島市出身で同志社大4年の坂本樹さん(22)=京都市在住=も勇気づけられた一人。田中将の復帰を心から喜び「もう一度東北を盛り上げて」とエールを送る。

 震災当時、東松島市大曲小6年だった坂本さんは津波で自宅が被災し、大曲小で避難生活を余儀なくされた。地元の少年野球チーム「大曲ドリームズ」に所属していたが、野球用具のほとんどは水に漬かった。

 「普通の生活も送れないのに、野球なんて」。諦めかけた2011年4月、東北楽天の選手が同校を訪問すると聞いた。サインをもらおうと、自宅から海水で汚れたボールを見つけ、ピカピカに磨いて用意した。

 訪れたのは田中将、嶋基宏捕手(現ヤクルト)らだった。「テレビで見ていたスーパーヒーロー。言葉が出ないほどうれしかった」。田中将と一緒に写真を撮り、ボールと友人の父親から譲られたグラブにサインをしてもらった。

 坂本さんは「あの出来事は、もう一度野球がやりたいと思うきっかけになった」と振り返る。進学した東松島市矢本二中で野球部の活動が始まると、サイン入りのグラブを使ってプレーした。「マー君になったような気分」で練習にも熱が入った。

 高校入学を機に野球から離れたが、今もグラブは部屋に飾っている。13年、田中将がチームを球団初の日本一に導いた際の映像は、テスト前や就職活動中など、ここ一番の時にも見て自分を奮い立たせている。「俺も頑張らなきゃいけない、と思わせてくれる」と感謝する。

 震災発生から間もなく10年。坂本さんは、あの時の田中将と同い年になった。4月に就職し、新社会人になる。「マー君みたいに仕事を通じて周りの人に元気を与えたい」。古巣でプレーする田中将から、また力をもらうつもりだ。

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