響き合う鎮魂と祈り 津波で犠牲になった女性の短歌「声明」に

佐藤慧さん
宮内康乃さん(撮影・川村麻純)

 東日本大震災で命を落とした岩手県陸前高田市の女性の短歌をテキストとする仏教音楽「声明(しょうみょう)」の公演「海霧讃歎(うみぎりさんだん)」が3月6日、山形県総合文化芸術館(山形市)で開かれる。女性の長男が震災後に詠んだ短歌を基にした新作声明「海霧回向」も、併せて上演される。宗派を超えた僧侶たちによる演奏団体「声明の会・千年の聲(こえ)」が、祈りと癒やしに満ちた響きを聴かせる。
 海霧讃歎の基となったのは、津波で亡くなった佐藤淳子さん=当時(54)=の短歌。
<海霧に とけて我(わ)が身も ただよはむ 川面をのぼり 大地をつつみ>
 海霧に寄せた思いに、作曲家の宮内康乃さん(40)が曲を付け、2012年に初演。16年には陸前高田でも上演された。
 海霧回向は、佐藤さんの長男でフォトジャーナリストの慧さん(38)が、母親に返した歌が基になっている。
<彼岸に渡り 銀河の砂塵(さじん)と 散りゆきて なおもあまねく 命のほとり>
 同様に宮内さんが曲を付け、新作声明に仕上げた。今回が初の上演となる。
 僧侶が唱える経文に旋律が付いた声明は6世紀中ごろに日本に伝わり、鎮魂や平和を祈る声の芸術として発展。能や浄瑠璃など古典芸能のルーツになった。
 今回は天台宗と真言宗の僧侶約30人が参加。それぞれ独自に発展したため唱法は異なるが、双方の特徴を生かしながら演奏する。
 宮内さんは「声の力のためか、声明を聴くと体が温まる、と話す方が多い。彼岸と交信してつながり、節目の年に次に進む機会となってほしい」と期待する。
 慧さんは「喪失と向き合う人の、心の進む速度はさまざま。悲しみを押し込めるのではなく、大切に感じてほしい。声明を体感する時間が、そうした時間の一助となればいい」と願う。
 芸術館は「あまり知られていない声明の魅力を、感じるきっかけになるのではないか」とみている。
 午後2時開演。入場料はS席5000円、A席4000円、B席3000円。
 27日からは同館1階通路で、被災地の震災10年の歩みを伝える慧さんの写真展「ReCollection」が開かれる。入場無料。3月14日まで。
 連絡先は同館023(664)2220。

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