「復興考える契機に」 前宮古市長・熊坂さん、著書「駆けて来た手紙」を出版

著書「駆けて来た手紙」を手にする熊坂さん

 前岩手県宮古市長で同市の内科医熊坂義裕さん(69)が、著書「駆けて来た手紙」(幻冬舎)を出版した。出身地である福島県の東京電力福島第1原発事故をはじめとする東日本大震災の被災地の課題や地方自治の在り方などについて論評。豊富な経歴を生かし、幅広い観点から被災地の今を分析している。

 2015年4月~20年3月、月刊誌に連載したコラム60編と識者座談会を収録した。四六判230ページで、タイトルは同郷の詩人草野心平の作品から取った。

 医師として、24時間無料電話相談「よりそいホットライン」を運営する一般社団法人の代表理事として、被災者の生きづらさに正面から向き合ってきた。

 身内を亡くした悲しみや経済的困窮、仮設住宅という狭い空間で起こるDV被害、震災関連自殺などにも言及。福島第1原発事故による汚染水の海洋放出に関しては、国民的な議論の必要性を訴える。

 1997年から3期12年、市長を務めた経験から国と地方の関係性にも触れた。中央の目線ではなく、真に地域の自立に資する改革を議論することが「地方創生」につながると強調している。

 このほか「目黒のさんま祭り」への宮古産サンマの提供が縁で、東京都品川区と災害時相互援助協定を締結し、震災直後から救援物資や義援金が届けられた逸話も紹介。首長は「賞味期限付きの消耗品」と意識し、悔いのない仕事を心掛けたと振り返る。

 地域に根差した観点でつづった一つ一つのコラムは、そのまま被災地へのエールになっている。熊坂さんは「震災から間もなく10年になるが、現状は厳しい。復興について考える契機になればいい」と話す。

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