「廃炉を問う」 資源エネルギー庁廃炉・汚染水対策官 木野正登氏/処理水方針 秋では遅い

 東京電力福島第1原発事故の発生から間もなく10年となる。完了まで最長40年に及ぶ廃炉計画は4分の1の時間が経過するが、汚染水や放射性廃棄物の行き先は見えず、最重要工程である核燃料取り出しも道のりは険しい。東電と政府の廃炉・汚染水対策責任者に現状認識と展望を聞いた。
(聞き手は福島総局・斉藤隼人)

 -東京電力福島第1原発にたまり続ける処理水の処分方針をいつ表明するか。

 「未定だが、今年の秋まで判断を延ばすとは思っていない。保管タンクは2022年秋以降に満杯を迎える。秋まで延びた場合(1年程度かかる)タンクの増設が間に合わない可能性があり、保管計画は本当に破綻する。(解散総選挙があったとしても)秋以降はかなり厳しいのが現実だ」

 -環境に放出すれば風評被害の再燃が懸念される。

 「関係省庁で対策を検討している。重要なのは、影響を受ける方々と対話を重ね、どんな支援が必要か聴き取って適時適切に対策を打つことだ。何か近道があるわけではなく、一人でも理解してくれる人を増やすしかない」

 -溶融核燃料(デブリ)の最終処分は処理水以上の困難が予想される。

 「一つ一つ解決していくしかないが、処理水でこれだけ時間がかかっていることを鑑みれば相当ハードな道のりになるだろう。デブリ並みに汚染された放射性廃棄物も今後、原子炉格納容器などいろいろな所から生じてくる。他の原発にはない非常に難しい課題だ」

 -廃炉工程の遅れが多く出ている。残り20~30年で完了する目標の実現性は。

 「先の工程が具体的に見通せず、現段階ではできるともできないとも言えない。目標を見直すレベルにもまだ達していない。デブリの取り出しが進むにつれ、先の工程も徐々に見えてくると思う。当面は目標を掲げ、最大限努力する」

 「デブリを全て取り出せるかどうかは原子炉内の状況次第。まだ格納容器すらごく一部しか中が確認できず、(より内側の)圧力容器は全く調査できていない。調査を早く進められないか模索している」

 -廃炉に対する東電の姿勢をどう評価するか。

 「東電の協力企業への丸投げ体質は事故前からあまり変わっていない。事前に注意深く検討していれば防げたトラブルや工程の遅れがたくさんある。かつてはそれでも回ったが、事故後は東電自身の責任が一層問われている。特に最難関のデブリを扱うには東電自ら技術力を磨き、問題を解決する姿勢が要求される」

 「2月13日の福島沖地震ではトラブルの公表が遅れるなど、住民の安心に対する意識の低さが露呈した。安全への意識が事故前に戻ってはいけない。廃炉を安全・迅速に進めるため、国は東電をサポートしつつ厳しく監督していく」

 -政府の人間として福島への思いは。

 「原子力に長く携わった者として事故の責任を痛感している。廃炉を進めることが自分自身の責任の取り方だと思う。福島に永住し、退官後も廃炉に関わり続けたい。人々の暮らしが戻るまで、政府は福島に対する責任を果たすべきだ」

[きの・まさと] 東京都出身。東大工学部原子力工学科卒。1992年に旧通商産業省入り。原発事故直後に福島入りし、政府原子力災害現地対策本部の広報班長を務めた。2013年9月から現職。52歳。

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