「車置いていけない」津波注意報で渋滞多発 徒歩避難は浸透せず

内陸部へ避難する車で混雑した多賀城市道の清水沢多賀城線=20日午後6時30分ごろ、多賀城市八幡(写真を一部加工しています)

 最大震度5強を観測した20日の地震で宮城県沿岸部に津波注意報が出され、車避難による渋滞が多発した。県内で注意報以上の発表は4年4カ月ぶり。車両が津波に巻き込まれ、多数が犠牲になった東日本大震災を教訓に各自治体は原則徒歩避難を呼び掛けるが、浸透していないことが分かった。新型コロナウイルスの感染を懸念し、車避難を選んだ人も多かったとみられる。
(報道部・坂井直人、気仙沼総局・鈴木悠太、多賀城支局・石川遥一朗)

 震災時に津波が浸水した区域内に避難指示を出した宮城県多賀城市では、県道仙台塩釜線や国道45号から内陸部に向かう車両が相次いだ。

 幹線道路沿いの飲食店から避難した男性店員(46)は「震災の被害は知っていたが、車は通勤などに使う生活必需品。最初から置いて逃げる判断は難しく、車で進めるところまで行こうと思った」と打ち明ける。

 沿岸部と内陸部を結び、緊急時の徒歩避難や物流路の役割を想定する市道「清水沢多賀城線」は約1・3キロ渋滞した。

 徒歩避難を原則とする市は震災後、幹線道路周辺など33カ所の建物を一時避難場所に指定。防災マップなどで周知するが、市の担当者は「早く逃げられると考えて車で避難したのだろう。避難訓練などで呼び掛けるしかないが、市民以外の車の通行量も多い」と頭を抱える。

 道路だけでなく、避難所の駐車場や周辺も混雑した。気仙沼市民会館では車内で待機する姿が目立ち、誘導に当たった一般社団法人代表金野憲太郎さん(65)は「ペットを連れたり新型コロナの感染を不安視したりする人もいた」と話す。

 2012年12月と16年11月に県内に津波警報が出た際も車避難が課題になった。復興事業による基盤整備で沿岸部の住宅再建が進んだ地域もあり、車利用の増加を警戒する声がある。

 東北大災害科学国際研究所の奥村誠教授(交通計画)は「新型コロナ感染への懸念は避難所滞在時の話であり、まずは高台などに一時的に避難すればいい。車避難の危険性を理解してもらうことが重要だ」と強調。その上で、車両が被災した際、徒歩で避難していれば保険特約で補償する制度の導入を提案する。

 車避難による渋滞の抑制も目的に、亘理町では一時的な避難場所となる防災広場を町内に整備。非常時は多目的運動場を駐車場として開放する方針だ。

 東北大未来科学技術共同研究センターの桑原雅夫教授(交通工学)は車社会の実情を踏まえ「渋滞することを想定しながら、避難先や経路を分散化するのが有効だ」と指摘する。

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