携行缶でガソリン買えない? 京アニ放火後、セルフGS増も拍車
「携行缶への給油を断るガソリンスタンド(GS)が増えた」。家庭菜園用の耕運機でガソリンを使うという男性の声が、河北新報社「読者とともに 特別報道室」に届いた。2019年7月に発生し、36人が死亡した京都アニメーション放火殺人事件後、車両に給油する以外の目的でガソリンを購入する際の手続きが厳しくなったのが主な要因とみられる。GSの店舗や従業員の減少なども背景にありそうだ。
「当店ではガソリン携行缶への給油はできません」。「携行缶への給油は○時〜○時の間にスタッフにお申し出ください」。仙台市青葉区にある複数のセルフ式GSで、こうした掲示が確認できた。
事件後、自走できる自動車以外にガソリンを給油する際の手続きが煩雑になった。総務省消防庁が2020年2月、規則を一部改正し、客の本人確認や使用目的の聞き取り、販売内容の記録を義務付けたためだ。
「資格者が少ない店や時間帯は断ることがある」。大手GS運営会社の担当者は、別の理由を挙げる。携行缶への給油は危険物の取り扱い資格を持つ従業員しかできないためという。
業界関係者は「従業員が作業に当たる必要があったのは事件前も同じだった」と説明。「何となく対応していた店や従業員が事件を受けて、法令を順守するようになったのではないか」と分析する。
関係者によると、セルフ店では、ノズルが給油口に正しく差し込まれたことを確認し、事務室内の許可ボタンを押す必要がある。法令に沿った対応をするためには、有資格者が同時間帯に2人以上、店にいる必要がある。
GSそのものや、店員が給油する店舗が減っている影響もあるとみられる。資源エネルギー庁によると、宮城県内のGSは632店(20年3月末現在)で、10年間で約2割減った。
石油情報センター(東京)によると、この間にセルフ店は1・6倍に増え、265店(同)と、GS全体の約4割を占めている。
県石油商業組合はGSの地図や電話番号、営業形態をまとめ、ホームページで公開している。阿部広之専務理事は「一部の曜日や時間だけセルフ営業とする店もある。携行缶への給油が必要な場合は、事前に確認してほしい」と話す。
(藤沢和久)
[京都アニメーション放火殺人事件]2019年7月18日、京都市のアニメ製作会社「京都アニメーション」第1スタジオで、社員にガソリンが浴びせられて火を付けられ、36人が死亡、32人が重軽傷を負った。殺人と現住建造物等放火などの罪で起訴された住所不定、無職青葉真司被告(42)は犯行当日の朝、現場近くのガソリンスタンドでガソリン40リットルを購入し、二つの携行缶に入れたとされる。
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