河北抄(4/5):第4回仙台短編文学賞の大賞に、森川樹さん…

 第4回仙台短編文学賞の大賞に、森川樹(いつき)さん(兵庫県)の『海、とても』が選ばれた。3月18日の本紙第2朝刊に載った作品を読むうちに、お経を聞いているような不思議な感覚に包まれた。
 亡くなった人を供養するお経は鎮魂を願うものだろう。同文学賞の応募条件にはないものの、寄せられる作品は、主人公が東日本大震災の被災地出身だったり、家族や友人を亡くしていたりなど、震災を何がしかの形で背負っていることが多い。
 『海、とても』の主人公恵美もそう。変わり果てた海辺の故郷に今も暮らし、失われた景色に思い出を重ねる。大切な人を救えなかった自らを悔やみ、自身が生き残った意味を問い続ける。
 大切な人を奪っていった運命に対して怒りをぶつけるのではなく、つらく苦しい現実を受け入れ、明日を生きようと歩みだす。慰霊の言葉としてこれほどふさわしいものはないのではないか。
 同文学賞は今年も作品を募る。今日もどこかで、静かに「お経」を編む人たちがいる。

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