社説(4/23):3度目の「緊急事態」/失政のつけ 国民に回すな

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、政府は東京都と大阪府、兵庫県、京都府を対象に3度目の緊急事態宣言を発令する方針を決めた。
 大阪と兵庫は5日から、京都は12日から「まん延防止等重点措置」が適用されたが、効果が上がっていない。大阪は変異株が広まり、重症者数が重症病床数を超える「医療崩壊」に陥っている。
 東京もリバウンド(感染再拡大)の危機に直面し、飲食店などに休業要請・命令が可能になる緊急事態宣言に早々とかじを切った。12日に重点措置期間が始まったばかりだ。失敗だったのは明白だ。
 宣言は国民の権利と生活を制限する。不自由を強いる事態をなぜ、回避できなかったのか。感染防止の決め手と目されるワクチンの入手も出遅れ、接種率は先進国で最低レベルだ。失政のつけが国民に回ってきている。政治の責任が厳しく問われよう。
 東京が宣言を短期集中型にしたがったのは、長引けば、7月23日に開幕する東京五輪・パラリンピックに影響が及ぶと懸念したからだ。開催都市だけに「五輪ありき」の姿勢が顕著だ。
 政府と与党には5月中に宣言を解除すれば、五輪に支障はないと見込む向きがある。
 最も優先すべきは、命と健康であるはずだ。宣言は政府の手中に残る「最後のカード」だ。再三切れば、効力は薄らぎかねない。医療供給体制に余裕が生まれないかぎり、宣言は解除すべきではない。
 宣言の五輪への影響について、菅義偉首相は20日、「オリンピックは(影響は)ないと思っている」と言明した。切迫した状況を前に、認識が甘すぎないか。
 首相は「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして開催する」「安全安心な大会になるように全力を挙げたい」とも述べている。
 ならば、コロナ禍を克服できず、安全性が危ぶまれる場合は、開催を再考すべきではないか。政治的なメンツにこだわった揚げ句の強行開催を誰が支持するだろうか。
 東京と大阪は、休業要請の対象に、飲食店のほか、百貨店、テーマパーク、ショッピングセンターといった大型施設も含める方向で検討している。感染防止のガイドラインを順守し、対策を徹底してきた施設にとっては、努力が報われないことに等しい。
 休業すれば、収入を得るすべがなくなり、取引先を含め、事業存続や雇用継続が苦しくなるのは必至だ。
 損失をそのまま補償する規定は、新型コロナ対応の改正特措法にはない。代わりに経営支援として協力金が支給されてきたが、損失の一部を補うにすぎない。
 政府はコロナ禍に備え、2021年度予算で5兆円の予備費を確保している。3度目の「緊急事態」だ。今度こそ、その場しのぎではない救いの手を差し伸べるときだ。

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