<ストーリーズ>菜の花畑 みんな笑顔に/上野 敬幸さん(48)南相馬市

【2021年4月】浜風に吹かれながら、満開になった菜の花の迷路を走る上野さんと倖吏生さん。東京五輪の聖火リレーのトーチがきらりと光った
【21年3月】1年待って参加した東京五輪の聖火リレー。南相馬市のコースを笑顔で走り切り、「すごく楽しかった」
【15年5月】被災した自宅周辺に造られた菜の花迷路

 「トーチを持った娘と一緒に走りたかったんだ」

 南相馬市原町区萱浜にある菜の花畑。東京五輪の聖火ランナーを同市で務めた上野敬幸さん(48)が次女の倖吏生(さりい)さん(9)と笑顔で駆け出した。

 東日本大震災の津波に自宅はのまれ、両親と2人の子どもを失った。現在は自宅を再建し妻と次女の3人で暮らす。

 震災直後、原発事故の影響で周囲の多くは自主避難したが、残って家族を捜した。徐々に人は戻り、手伝ってくれる仲間も増えた。自らが代表となりボランティア団体を設立した。

 仲間と捜索やがれきの片付けを続けるうち、思い付いたのが菜の花の迷路だ。「悲しみに暮れる沿岸部を笑顔にしたい」。今では地区を代表する行事となり、多くの家族連れが訪れる。

 自身の捜索活動を記録した映画の上映会で全国を回る。被災体験を伝えているだけに、今も災害で犠牲者が出るたび胸が痛む。「まずは避難する、笑われたっていいの。命が残ればいい。震災は忘れても、教訓だけは生かして」

 今年は花の生育が良く、ゴールデンウイークを待たずに開放している。昨年中止したイベントも感染症対策を徹底して再開した。

 「ずっと続けるよ、俺」。天国にいる子どもも見守ってくれるから、いつも笑顔で生きてゆく。
(写真映像部・川村公俊)
(ストーリーズは今回で終了します)

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