朽ち果てる古里に住民ら焦燥 帰還困難区域の展望描けず

復興拠点から外れた地区。除染や家屋解体の見通しはない=福島県葛尾村

 東京電力福島第1原発事故による避難指示が継続する福島県の帰還困難区域を巡り、将来の展望を描けない状況が続いている。地元は6月までに具体的方向性を示すよう求めるが、国は解除時期の明示にはなお慎重で、除染の実現性が目下の焦点となりそうだ。原発事故から10年がたち、住民の帰還意欲は低下し、焦りを募らせる関係町村は政府に本格検討を再度迫る方針を固めた。

 原則立ち入りが禁止されている帰還困難区域は、福島県内7市町村の337平方キロに及ぶ。8%に当たる27平方キロは優先的に避難解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)として国が認定。残る92%は解除方針が白紙で、除染や家屋解体の見通しすらない。

 浪江、双葉、大熊、富岡、葛尾の5町村でつくる協議会は今年2月、拠点外区域の具体的方針を6月までに示すよう国に要望書を提出。初めて期限を区切り、時間軸の明示や復興拠点拡大、家屋解体を求めた。

 拠点内の避難解除は双葉、大熊、葛尾の3町村で来春を予定し、7月にも住民説明会が始まる。協議会会長の吉田数博浪江町長は「拠点外を含む帰還困難区域全体の説明を求める声は強く、早く方針を示してもらわなければ困る」と言う。

 しかしまだ国の動きは鈍い。原子力災害現地対策本部の担当者は「何ができるか検討している」と言葉少な。与党の復興加速化本部が7月にも第10次提言をまとめる方向で調整しており、慣例では政府方針はその後になる。

 提言に先立ち自民、公明両党の加速化本部は4月に帰還困難区域を2日間ずつ視察した。自民党の額賀福志郎本部長は「与党として方向性を打ち出さなければいけない」と述べたが、同行した複数の首長は「その後の政府・与党に動きはない」と明かす。

 10年で住民の帰還意欲は低下した。第1原発周辺4町村と国、県による昨年の意向調査で「戻らない」と回答した住民は5~6割と8年前から増加、避難先への定着が進んでいる。

 菅義偉首相は帰還困難区域の避難解除を「時間をかけてもやり遂げたい」とする一方、政府内には「除染には多額の税金がかかる。国民が納得できる効果があるかが重要だ」(関係者)との見方もある。

 政府は昨年12月、居住を前提にしない土地に限り、除染なしで避難解除できる仕組みを整えた。あくまで要望があった場合の例外的措置だが、地元には例外の拡大に不安が広がる。

 「解除時期は無理でも、除染の方向性までは示してくれるのではないか」。双葉郡のある首長は最低限度の期待を口にした。

 協議会は近く、煮え切らない態度の政府に再要望書を提出する。昨年12月まで会長を務めた篠木弘葛尾村長は「古里が朽ち果てていくのを見るのはつらく、このままでは住民は死んでも死に切れない」と話す。

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