社説(6/6):農業分野の知的財産/輸出拡大の武器にしたい

 農林水産省が農業分野での知的財産の保護と活用に向け、本年度から5年間の「知的財産戦略2025」を策定した。戦略は2007年に初めて作られ、今回が3度目の見直しとなる。

 これまでは商標権などによるブランド作物の模倣品対策が中心だったが、新戦略は海外流出の防止に加え、特許や育成者権などを活用したライセンス・ビジネスの支援まで踏み込んだ内容となった。

 高品質な日本の農産物は、それ自体が貴重な知的財産だ。その価値を海外でも最大限に発信し、国内農業の活性化につなげていきたい。

 高級果物の種子や苗、和牛の遺伝資源については昨年、改正種苗法と改正家畜改良増殖法などが相次いで成立し、実効性のある流出防止策を打ち出せるようになった。

 新戦略はこれら改正法の積極的な運用に加え、地理的表示(GI)の相互保護に取り組む国・地域の拡大、知的財産を販売戦略に生かせる人材の育成-などが柱となる。

 4月施行の改正種苗法を巡っては、海外への持ち出しが制限される1975品種が第1弾として公表され、東北関係ではブランド米の「青天の霹靂(へきれき)」(青森)と「だて正夢」(宮城)が含まれた。

 違反して海外に持ち出した場合、個人では10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金が科される。

 人気品種の流出は、政府が成長戦略に掲げる農産物の輸出拡大を直撃する。国の機関が30年以上かけて開発した高級ブドウ「シャインマスカット」は香港や台湾への有力な輸出産品になったが、苗木が流出した中国や韓国で栽培され、東南アジアなどに輸出されるようになった。

 日本産のイチゴが韓国に流出したケースでは、最大220億円の損失が生じたとする農水省の試算もある。防止策の強化は当然だろう。

 さらに輸出先の国々で知的財産を有効活用するための知恵も重要になる。参考にしたいのがニュージーランド産キウイの輸出を急増させたゼスプリ社の取り組みだ。

 同社はゴールドキウイの国際種苗登録と商標権の保有などを通じて無許可栽培を防ぐ一方、愛媛、佐賀両県の農家との契約栽培で、ニュージーランド産が端境期となる冬にも出荷できる態勢を構築した。全国のスーパーで周年販売が定着し、売り上げ拡大の大きな要因となった。

 品種の開発から商品化や産地形成、国内外での販売促進など、各段階で知的財産の活用を意識するようになれば、国内農業の生産性はまだまだ向上する余地がある。

 地域に根付いた栽培や飼育のノウハウ、流通上の工夫などにも保護すべきものは多いはずだ。まずは評価する目と活用する知恵を持った人材を広く育成していく必要がありそうだ。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら
先頭に戻る