仙台市職員、震災経験や教訓引継ぎへ 研修用ガイドブック作成

伝承ガイドブック(左)とeラーニング教材

 仙台市は東日本大震災の対応に当たった市職員の経験や教訓を引き継ぐため、新規採用職員の研修などで使う2種類の教材と活用法をまとめた「職員間伝承ガイドブック」を作成した。職員有志が始めた災害エスノグラフィー調査による証言記録も活用し、災害時に主体的な判断や対応ができる職員を育てる。
 教材は庁内LANやインターネットを介した学習に使う「eラーニング」、グループワーク向けの「対話型ワークシート」。宮城教育大防災教育研修機構、東北大災害科学国際研究所と共同で作った。
 eラーニング教材は震災5年の節目に発行した市の記録誌を基に、災害の教訓や震災前後の対応の変化をクイズ形式で学ぶ。津波防災、避難所運営の2テーマが完成していて、今後は宅地被害、生活再建、罹災(りさい)証明などを追加する。
 対話型ワークシートは、市職員の証言記録を事前に読んで取り組む。実際の体験談から当時の職員の判断や行動を分析し、他に取り得た選択肢も考え、グループワークで意見交換する。証言記録は震災対応の業務別に67人分を用意する。
 市によると、発生から10年が経過し、震災後入庁の職員が全体の4割を超えたという。これまでも新人職員の研修に震災遺構荒浜小(若林区)の見学を組み入れるなど経験の伝承に取り組んできたが、体系的な伝承プログラムはなかった。
 職員有志による自主勉強会「Team Sendai(チーム仙台)」が2012年に取り組みを始め、東北大や常葉(とこは)大(静岡県)との共同研究に発展した災害エスノグラフィー調査の実績も踏まえ、20年度から研修用教材やガイドブックの作成を進めてきた。
 郡和子市長は1日の定例記者会見で「災害の経験や教訓が息づく組織風土を醸成し、職員一人一人が『災害に強い街・仙台』を支える意識とスキルを身に付け、市民が安心して暮らせるように努める」と語った。
 ガイドブックは市ホームページに掲載し、市民団体や民間企業に活用を呼び掛けるほか、災害に見舞われた他自治体にも提供する。

災害エスノグラフィー調査 災害現場に居合わせた人、災害に関わった人への体験の聞き取りを通じ、その目に映った災害像を明らかにして記録する手法。質問項目を設けず時系列に沿って何を体験し、どう感じたかなどを一方的に語ってもらう。災害時に何が起きるのかを居合わせなかった人が追体験し、教訓を共有することが目的。1995年の阪神大震災以降、一部研究者が実践してきた。

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