つなぐ(2)検証/成果と教訓、総括進まず

阪神大震災の教訓を参考に復興を進めた岩手県。米沢担当課長は伝承の意義を強調する=3日、岩手県庁

 38兆円もの国費が投じられた東日本大震災の被災地で、教訓を社会と共有する「大前提」となる復興の検証が滞っている。

 当初策定した復興計画(2011~18年度)を終えた岩手県。昨年3月、教訓と課題を380ページにまとめた冊子「東日本大震災津波からの復興-岩手からの提言」を発行した。

 「災害対応を時系列に並べ、行政職員が現場で使える内容を意識した」。県復興推進課で担当課長を務める米沢功一さん(47)が冊子を手に説明する。

 県は2019年度、初動対応や復旧復興の成果、課題を庁内で整理する作業に着手した。第三者委員会に計6回諮り、県の取り組みや提言を87項目にまとめた。他自治体の参考になるように反省点や工夫した点を盛り込み、有識者らのメッセージも添えた。

 冊子を作るきっかけになったのが、阪神大震災(1995年)の復興を検証した兵庫県だ。有識者98人でつくる復興10年委員会が1年半かけて検証し、459項目の提言をまとめた。

 岩手県復興局にあった兵庫の冊子はびっしりと付箋が貼られ、復興に役立てられた。米沢さんは「今度は他自治体に教訓を発信することが被災自治体の使命」と話す。

 河北新報社は5月下旬、岩手、宮城、福島3県と3県の被災42市町村に復興計画の検証状況を尋ねた。「検証した」と答えたのは宮城、福島両県を含む12自治体(26・7%)にとどまった。

 検証といっても、成果や課題を踏まえた教訓をまとめたのは岩手県と大船渡市だけ。他は、内向きな総括や、写真や年表とともに復興の経過を紹介しただけの記録誌が目立つ。兵庫県や新潟県中越地震(2004年)の10年検証を実施した新潟県のように、検証に特化した有識者委員会を設けた自治体はゼロだった。

 新潟県の検証作業に携わった岩手大の福留邦洋教授(50)は「阪神や中越と比べ、東日本大震災はなぜ多くの人が犠牲になったのかなど『あの日』を含めた初期対応の検証が多い」と論点の違いに着目する。

 復興交付金事業がほぼ終わり、個々の実績評価は進むが「住民から事業への大きな非難はなく、全体の検証作業は必要と考えていない」(宮城県七ケ浜町)との声も出ている。

 膨大な復興データが各部署に散在したまま政策にも生かされず、たなざらしにされる可能性がある。

 発生から26年たった阪神大震災の被災地では今も復興検証が続けられている。

 神戸市は今年1月、JR新長田駅前20ヘクタールの再開発事業の検証結果をまとめた。再開発ビルの売却が進まず赤字見込み額は300億円を超え、「経済情勢が変化した」などと総括。一方、市民団体は「災害復興に便乗した副都心建設だ」と市の検証を再検証する。

 阪神大震災の復興にも詳しい福留教授は「まちづくりに関わった人の苦労や思いが強いと検証が行われる。根っこにあるのは、自分たちと同じ苦労を繰り返さないでほしいという思いだ」と述べ、こう強調する。

 「全国の支援を受けて進めてきた復興の歩みを検証し、発信することが感謝の証しになる」

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