「検証・郡市政 選択軸の現場」(1)音楽ホール 決まらぬ場所、財源も壁

県民会館(左)、交流広場(右)、仙台フィルハーモニー管弦楽団の演奏会のコラージュ

 任期満了に伴う仙台市長選(7月18日告示、8月1日投開票)は告示まで1カ月を切った。再選を目指す現職の郡和子市長(64)が立候補を表明し、新人が挑戦の意向を示している。選挙戦となった場合、109万都市の有権者は何を基準に1票を投じるのか。音楽ホール整備など主な選択軸の現場を追った。

 広瀬川西岸の緑豊かな敷地が「最有力」と目されたまま宙に浮いている。

 青葉区の市地下鉄国際センター駅北側の「せんだい青葉山交流広場」。市が中心部に整備する音楽ホールの候補地で、郡市長が「魅力的なエリア」と評価するものの決定してはいない。

 宮城県美術館、市博物館、仙台国際センター、東北大が集まる文教地区にある。県美術館に40年近く勤めた有川幾夫前館長(69)は「文化芸術が活発な都市として発信する意味では適地」と太鼓判を押す。

 2019年3月、有識者の音楽ホール検討懇話会は2000席規模の「生音源に対する音響を重視した高機能、多機能ホール」の整備を提言。民有地以外では交流広場のほか、青葉区の錦町公園、西公園など計6カ所を候補地に挙げた。

 市は当初、中心部の回遊性を高める点で優位とみられる錦町公園や西公園を有力候補に検討を進めたが、緑化政策を議論する審議会が「公園は空き地でなく、都市の資源」と反発したため、暗礁に乗り上げた。

 事態が動いたのは20年11月。村井嘉浩知事が県美術館移転を断念し、現地存続が決まった。郡市長は「文化芸術拠点として、より高みを目指したい」と文教地区の活性化を表明。交流広場が1番手に急浮上した。

 決定は秒読みと思われたが、仙台経済同友会がすぐさま異を唱えた。翌12月、「定禅寺通(青葉区)周辺が望ましい」との提言書を郡市長に提出。終演後に2000人の観客をさばく地下鉄の輸送力を疑問視し、市の動きをけん制した。

 定禅寺通では、県が東京エレクトロンホール宮城(県民会館)の移転を決定、市が市民会館のホール機能停止を検討する。集客力の低下は避けられず、まちづくり関係者は頭を抱える。

 郡市長は「2000席には面積が足りない」と県民会館の跡地を候補地から外す。だが、定禅寺通り街づくり協議会の米竹隆事務局長(79)は「仙台のシンボルストリート。人の流れを維持し、にぎわいを創出するためにはホールが必要だ」と訴える。

 音楽ホール整備は、市が1992年に掲げた音楽堂構想から続く長年の懸案。財政難を理由に棚上げした時期もあったが、東日本大震災で音楽の力が再認識され、待望論が再燃した。

 ところが、新型コロナウイルス感染拡大がまたも暗い影を落とす。感染抑制や経済対策に多額の予算を投入し、整備費200億円以上の音楽ホールが許される財政状況ではなくなった。

 郡市長は市議会6月定例会で「都市間競争を勝ち抜くために必要」と推進の立場を堅持したが「財源の見通しを持つことが肝要」と先送りの可能性も示唆した。

 市民有志でつくる「音楽の力による復興センター・東北」(青葉区)の大沢隆夫代表理事(73)は「音楽が盛んな仙台を支える本拠地として欠かせない施設。場所を含め、将来どんな街を目指すのかとの観点で議論すべきだ」と提言する。
(報道部・布施谷吉一)

[音楽ホール整備]有識者の検討懇話会は2000席規模の大ホール、300~500席程度の小ホールがあり、管弦楽やオペラ、歌舞伎など幅広い舞台芸術を上演する多機能施設を提言。建築面積を9000~1万1000平方メートルと想定し、民有地を含む計9カ所を候補地とした。せんだい青葉山交流広場は「都心部西側の開発、将来像によっては期待できる」と評価する一方、「回遊の拠点、活性化につなげる目的の実現は難しい」と課題も指摘した。

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