「検証・郡市政 選択軸の現場」(2)ワクチン接種 「個別」重視 転換の時期

医療機関で接種を受ける高齢者。8割近くが個別接種を選択した=5月31日、仙台市青葉区のはちまん石川内科クリニック

  「高齢者はおおむね7月中には2回接種を終えられそうだ」

 仙台市内の21カ所で新型コロナウイルスワクチンの集団接種が始まった12日、郡和子市長(64)の言葉は自信に満ちていた。

 市内400カ所以上の医療機関による個別接種、JR仙台駅前の大規模集団接種と合わせ、この日、3種類の接種体制が整った。

 市が公表した9日時点の推計で、65歳以上の高齢者27万人余りのうち、約7割が1回目の予約を完了したとみられた。希望する高齢者全員への接種完了を「7月末」とした目標に近づいている手応えがあった。

 スピードを重視する宮城県や東北大が、大規模集団接種を推進したことも奏功したが、大多数の高齢者が選択したのは、かかりつけ医による個別接種だった。

 泉区館の無職芳賀いつ子さん(81)は、集団接種を「考えもしなかった」と明かす。「大規模会場まではバスで片道1時間かかる。市の集団接種会場に行くにもバスの本数が少ない」と吐露。迷わず、地区唯一の診療所で予約を取った。

 市と市医師会は、高齢者の8割程度が個別接種を選ぶと見込み、医療機関との調整を重ねた。4月下旬、政府が7月末完了の方針を打ち出し、状況は激変したものの、個別接種に比重を置く姿勢を変えなかった。

 現時点の予約状況を見ると、個別接種を選んだ高齢者は8割近くに及ぶ。市と市医師会の戦略はおおむね「的中」したことになる。

 ただ、7月末は両者の共通目標とは言い難い。市医師会の安藤健二郎会長は「7月末までに終えなければいけない医学的根拠はない。安心、確実(な接種)の根底は揺るがない」と期限ありきにくぎを刺す。

 今月18日、市は64歳以下の市民約66万人への接種券送付を始めた。年代別に順次発送している。ワクチン接種は「第2ステージ」に差し掛かったが、ここへ来て個別接種の「一時的なパワーダウン」(市医師会幹部)が懸念されている。

 医療機関は高齢者の予約でいっぱい。64歳以下は接種券を手にしても、早期の個別接種が難しい状況だ。実際、市がホームページで公開中の実施医療機関も、当初の420カ所から323カ所に大きく減った。

 青葉区のはちまん石川内科クリニックの石川一郎院長(47)は「高齢者接種に加え、特定健診も始まっている。予約を制限しないといけない日が出てくるかもしれない」と打ち明ける。

 「個別」重視は切り替え時期を迎えつつある。市は64歳以下の集団接種の予約枠を拡大したほか、平日の実施も視野に入れる。県も7月1日以降、大規模集団接種の対象を年代を問わず全県民に拡大し、高齢者以外の接種の加速化を図る。

 中堅市議は「行き当たりばったりは駄目。働く世代が利用しやすい接種態勢を早く打ち出すべきだ。このままでは、希望しても接種を受けられない市民であふれてしまう」と危惧する。
(報道部・伊藤卓哉)

[仙台市の新型コロナウイルスワクチン接種] 4月20日に高齢者施設の入居者への先行接種を開始。大規模集団接種は5月24日、個別接種は同31日、集団接種は6月12日に始まった。65歳以上の高齢者の接種率は23日時点で、1回目62・2%、2回目8・1%。64歳以下は学校教職員ら優先接種対象者は接種券到着後に予約でき、それ以外は8月中旬以降に予約開始時期をはがきで知らせる。

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