【動画】自慢のブドウ 丸ごと絞った農家のワイン 宮城のワイナリー探訪(3)

全量を自家栽培したブドウで仕込む「大﨑ワイナリー」

 2019年、宮城県大崎市に開設した「大﨑ワイナリー」。県内で唯一、ワイン全量を自家栽培したブドウだけで仕込んでいます。JR古川駅近くにある醸造所を訪ねると、製造・販売責任者の喜藤孝徳さん(41)が迎えてくれました。
(編集局コンテンツセンター・佐藤琢磨)

シンプルな外観のワイナリー=宮城県大崎市古川

 生食用のブドウ3種類で造るワイナリー。車のガレージのような醸造所にはステンレスタンクと圧搾機が整然と並び、余計な物は一切なし。まさに作業場といった趣です。「あくまで農家が本業ですから」と喜藤さん。醸造施設の見学やワインの直接販売はしていません。

 喜藤さんの両親は20年前から、生食用のブドウを年に10トンほど栽培しています。醸造所から車で10分ほど、市内を北西から南東に貫く北上川水系の江合(えあい)川沿いの田園地帯に畑はあります。

 米どころ大崎耕土は保水力の高い平地。喜藤さんは「ブドウ栽培は水はけが大切なので、決して適した土地じゃない。でも、私たちには農家ならではの栽培技術があります」と力強く話します。畑をネットで囲って鳥獣外を防ぎ、湿気を避けるためにワイン用の品種より幹を高く伸ばして育てています。

 2020年秋、赤、白、ロゼの3種(いずれも750ミリリットル、1650円)を発売しました。喜藤さんは「醸造技術はまだまだだけど、ブドウの質で勝負ですね」と笑います。

江合川沿いに3カ所ある大﨑ワイナリーのブドウ畑=2021年6月、宮城県大崎市古川

 小人が描かれたワインのラベルには物語があります。赤ワインのハーヴェストは英語で「収穫」、白のブリューは「醸造」、ロゼのバンケットは「宴会」の意味。ブドウの栽培からワインの醸造、完成を祝うまでの道のりが描かれ、3本を並べるとまるで絵本のようです。

 「キャンベルアーリー」で醸造した赤ワインは程なく完売。「ナイアガラ」で仕込んだ白と「スチューベン」で造った甘口のロゼが販売中です。

 生食用の品種はワイン用と比べて果汁が多く、種は小さく果皮が薄いのが特徴。「凝縮した味わいにならないのでワイン愛好家には物足りないかもしれないけれど、お酒が苦手な人にもフレッシュで飲みやすいはず」と喜藤さんは胸を張ります。

 白は、グラスに注ぐと果実を搾ったようなナイアガラの甘い香りが立ち上がります。飲めばさっぱりとした味わいで、食事にも合いそうです。「魚介はもちろん、だしが効いた料理にいい。日本酒に合わせるような料理で試して」と勧めます。

 「気軽にスナック類と合わせてほしい」と言うのはロゼ。しっかり冷やすと甘さが抑えられ、すっきりと飲めるそうです。

ラベルには小人が描かれている

 ともに大崎市の観光施設「醸室(かむろ)」と酒卸業「佐々木屋物産」を中心に、登米市と加美町の酒販店でも販売しています。県庁で7月1、2日に開かれる「食材王国みやぎマルシェ」にも出店予定です。

 でも、喜藤さんは「背伸びせず、まずは地元で売ります」ときっぱり。「求めやすい値段で気軽に楽しめる地ワインとして愛してもらいたい」と先を見据えます。

 大崎産のブドウでできたワインには、実直なブドウ農家の夢がぎゅっと詰まっていました。

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