群がる魑魅魍魎 経済事件の舞台に<仙台・ホテル木町解体(下)>

 2000年代初頭、「エンゼルライフあおば」と名乗った架空の老人ホーム事業に、首都圏の投資家たちが相次いで出資した。
 勧誘パンフレットに記載されたエンゼルライフあおばの住所は「仙台市青葉区木町通2丁目354番地1」。そこにあったのは老人ホームではなく、廃業したホテル木町だ。投資話の正体は、当時既にブローカーらの手にあり、利用価値のないホテル木町の区分所有権の売買だった。

架空の老人ホーム事業の計画

詐欺まがいの投資話

 ホテル木町管理組合の理事長(59)らがビル解体に向け動きだして半年ほどたった2018年2月。同意取り付けのため首都圏の区分所有者を訪ね歩くと、15年ほど前の詐欺まがいの投資話を知ることになり、同時期に世間を騒がせた出資法違反事件と結び付いた。
 「老人ホーム事業に出資すれば、高額の配当が得られる」。約1000万円の被害に遭った区分所有者は、実態を知らないまま誘い文句に乗った。被害は全国で約200人、総額7億円近くに上ったと報じられた。
 金を集めたのは、投資コンサル会社「キャピタルインベストジャパン」。代表取締役は元北海道・沖縄開発庁長官の故稲垣実男氏。エンゼルライフあおばに関わる出資法違反(預かり金の禁止)容疑で04年6月に警視庁に逮捕され、有罪判決を受けた。
 閣僚経験者による異例の出資法違反事件は宮城県職員も巻き込んだ。職員はキャピタル社の営業担当を名乗る男から謝礼金10万円を受け取り、県内の高齢者名簿を渡したとして06年2月、収賄罪で有罪判決を受けた。名簿は事業の実効性を装う材料に使われたとみられる。

元北海道・沖縄開発庁長官の逮捕などを報じた記事

区分所有者、顔触れさまざま

 ホテル木町の登記簿の区分所有者を捜すと、また別の経済事件にぶつかった。
 区分所有者の男が実質的に代表を務める投資会社が、高級イチゴを育てる栽培棚への投資を募っていた。
 ホームページにあった長野県軽井沢町の事業所を理事長の仲間が訪れると、無人で事業実態がなかったという。この区分所有者は19年1月、岡山県警に特定商取引法違反(不実告知)の疑いで逮捕され、有罪判決を受けた。投資会社の表向きの代表取締役として、元首相の親族の名があった。
 理事長らが区分所有者を訪ねる旅は宮城のほか、北海道、福島、千葉、東京、神奈川、山梨、大阪の7都道府県に及んだ。詐欺師、指定暴力団系組員、右翼、新興宗教、大学教授…。顔触れはさまざまだった。

金融会社社長から届いた手紙と登記簿

複雑になった権利関係

 ホテル木町は1977年に開業し、97年にはホテル従業員が、分譲部分に住む外国人に刺殺される事件の現場ともなった。99年に1~3階のホテル部分が廃業。競売を経て在日韓国人の金融会社社長の手に渡った段階で、権利関係が複雑になり、反社会勢力が群がった。
 2019年9月の管理組合総会で、全区分所有者107人のうち5分の4を超える99人から同意を取り付け、廃虚となったホテルの解体が決まった。その前、反社会勢力の「招き役」だった金融会社社長から理事長に手紙が届いていた。
 「手紙にて失礼します 青森のマンションを12戸を買って下さい 電話を下さい お願いします」
 同封された登記簿の住所をネットで調べてみた。パソコンの画面に、廃虚のようなマンションが映し出された。

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