「検証・郡市政 あの問題は今」(中)パンダ誘致 日中関係に翻弄される

ジャイアントパンダ(左)、奥山市長にパンダのぬいぐるみを渡す中日友好協会会長(右上)、八木山動物公園(右下)のコラージュ

領有権問題で暗礁に

 被災地の子どもに夢や希望を届けるプロジェクトが、東日本大震災から10年が過ぎても足踏みしている。

 仙台市が2011年に名乗りを上げた八木山動物公園(太白区)へのジャイアントパンダ誘致。緊張と雪解けを繰り返す日中関係に翻弄され、新型コロナウイルス感染拡大も重なって現在は動きが止まっている。

 パンダ誘致のきっかけは11年5月、中国の温家宝首相(当時)が被災地を訪れた際、出会った少女が「パンダが好き」と手紙を書き、温首相から返事が届いたことだった。それを聞いた奥山恵美子市長(当時)が9月に中国大使館を訪れ、パンダの貸与を要請した。

 日本政府も後押しし、12月の日中首脳会談で貸与に合意。市は12年4月、副市長をトップとする導入プロジェクト会議を発足させ、動物公園の東門付近にパンダ獣舎の予定地を確保して受け入れ準備を急いだ。

 だが、12年夏以降、尖閣諸島の領有権問題を巡って日中関係が悪化し、誘致は暗礁に乗り上げた。再び機運が盛り上がったのは約6年後。18年10月に会談した日中首脳が貸与協議の推進で合意し、仙台が受け入れ先の有力候補に挙がった。

 20年4月に習近平・中国国家主席の国賓来日が予定され「手土産」でパンダの貸与が決まる-。そんな期待が膨らんだ直後、新型コロナが世界的に流行し、瞬く間に立ち消えとなった。

受け入れ態勢整える

 誘致の実現はまたも不透明になったが、市は「その時」に向けた地道な取り組みを続ける。16~19年には中国で年1回ある「ジャイアントパンダ繁殖技術委員会」に職員を派遣。繁殖や飼育の研究を深めるとともに中国側に熱意を伝えた。

 郡和子市長(64)も19年11月、駐日中国大使に面会し、パンダ貸与を巡り意見交換した。導入プロジェクト会議も存続させ、関係局長が情報共有を図るとともに、外務省の担当者と連絡を取り続けている。

 動物公園の金集隆幸園長は「誘致が始まった11年に比べ職員の技術力は高まっている。動物公園の魅力向上にも取り組む」と受け入れ態勢に自信を見せる。

 パンダ獣舎の建設費や飼料代、中国に支払うレンタル料の5年分など資金面は、大手芸能プロダクション「ジャニーズ事務所」が11年に支援を表明した。

 市によると、窓口だった「マーチングJ財団」は今年4月に解散したが、担当者は「ジャニーズグループの支援姿勢は変わらない」と説明しているという。

 来年は日中国交正常化50年の節目となる。市幹部は「新型コロナが収まれば、何か起きるのではないか」と前進に期待を寄せる。

 宮城県日中友好協会の水戸雄二理事長(74)は近代中国の文豪、魯迅(1881~1936年)の仙台留学から120年となる24年に、市幹部が訪中することを提案する。「さまざまな機会を捉え、誘致の声を上げ続ける必要がある。パンダに東北の復興を見せ、日中友好の証しにしたい」と願う。
(報道部・高木大毅)

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