河北春秋(7/18):「阿武隈の流れ豊かに 国土(くにつち)を…

 「阿武隈の流れ豊かに 国土(くにつち)を潤すところ わが希望(のぞみ)あり」。福島県の母校の中学校の校歌に刻まれた風景は卒業後40年たっても変わらない。今もそらで歌えるから不思議だ▼多くの校歌には土地の名所や自然の豊かさが表され、愛郷の念をそそる。だが、例外も。釜石市の釜石小もそう。「いきいき生きる いきいき生きる ひとりで立ってまっすぐ生きる」「困ったときは手を出して ともだちの手をしっかりつかむ」▼統廃合に伴い2003年にできた。自然描写は一切ない。作詞は井上ひさしさん。当時は「校歌らしくない」と地元で異論もあった。見直された契機は東日本大震災。避難所となった釜石小で校歌が流され、身を寄せた市民は大いに励まされた。震災の前年に逝った井上さん。校歌に込めた普遍性が理解された▼東京電力福島第1原発事故で避難中の会津若松市に来春開校する、福島県大熊町の3小中学校が移行する義務教育学校「学び舎(や) ゆめの森」で校歌作りが進む。作詞は詩人の谷川俊太郎さん。児童生徒10人は思いを手紙や絵にして谷川さんに託した▼彼らは原発事故前の町の記憶がほとんどない。風景も一変した。23年春に学校が戻る町の将来の担い手たちに、どんな言葉を紡ぐのか。現在の校歌に耳を傾けつつ思う。(2021・7・18)

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

秋季高校野球宮城大会 勝ち上がり▶


企画特集

先頭に戻る