河北春秋(7/20):元横綱で解説者の北の富士勝昭さんの引退劇…

 元横綱で解説者の北の富士勝昭さんの引退劇はすかっとしている。47年前の名古屋場所途中。宿舎で報道陣に表明した。「普通なら師匠に相談してからという段取りになるのだが、これは、格好良く引退したいという気持ちが先行した勇み足? だった」と自伝にある▼「セリフもふくめて、人間味満開の男道を生き抜く北の富士らしさと言えるだろう」。心境を作家の村松友視さんが『北の富士流』で記した。2年ぶりの名古屋場所。横綱白鵬関が大関照の富士関を破り全勝優勝した。いろいろな意味で「人間味満開」だった▼土俵際での立ち合いや強烈なかちあげ。横綱の品格に外れた振る舞いに驚かされた。鬼の形相で雄たけび。進退を懸けた覚悟が満身創痍(そうい)の体を突き動かしたのだろう▼敗れたとはいえ、照の富士関は純白の綱を締める。けがや病気で序二段まで転落。酒をやめ、皿洗いなど部屋の雑務もこなした。今場所は絶えず前へ。ただ一人、横綱を倒そうという気迫がみなぎっていた▼「やっていることはえげつないんだけど、勝負に懸ける執念…」。北の富士さんは千秋楽のテレビ中継で白鵬関をこう評した。ときにユーモアと温情がにじむ解説は今回、辛口が目立ったようだ。それぞれの土俵の美学が交錯した真夏の名古屋だった。(2021・7・20)

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