ネイル、マッサージで心も身も元気 介護・医療に「おしゃれ」活用

入院患者に福祉ネイルを描く小磯さん(左)と佐久間さん(中央)=公立黒川病院
白い花が描かれた早坂さんの爪
山野草が描かれた佐藤さんの爪
星が描かれた松田さんの爪

 おしゃれを高齢者や患者のケアに生かす取り組みが、医療や介護の現場で少しずつ広がっています。指先から笑顔を届ける「福祉ネイル」と、仙台が草分けの「ビューティーケア」。心を前向きにする活動を紹介します。
(生活文化部・会田正宣)

指先から笑顔届ける「福祉ネイル」

 「好きな色は何色ですか?」「どんな模様が良いですか?」

 宮城県大和町の公立黒川病院で5月末、入院中の女性患者2人、男性患者1人に福祉ネイルが施された。名取市の福祉ネイリスト小磯麻有さん(39)が爪をやすりで磨き、マニキュアで模様を描いていく。

 初体験の早坂テルコさん(87)は最初ためらったが、描かれた白い花に涙を浮かべた。「きれい。(ネイルは)見たこともなかったけれど楽しい」と笑顔を見せた。佐藤八重子さん(74)はストレッチャーに横になり、趣味の山野草を描いてもらった。松田寛さん(80)は星を選んだ。

 福祉ネイルは、指先をおしゃれにして心を明るくする取り組み。通常のネイルより絵柄を大きく、見やすく描いたり、思い出につながる絵を描いたりする。ペットの犬猫の絵をリクエストされる時もある。高齢になっても身だしなみを整えると社会との関わりを意識して、周囲との会話が活発になる効果もあるという。

 福祉ネイリストは一般社団法人「日本保健福祉ネイリスト協会」(東京)が認定。宮城県では約30人が活動する。県内唯一の認定校を運営する小磯さんは「技術より心に寄り添うことを大切にしている」と話す。

 黒川病院では、看護師の佐久間ともみさん(33)が小磯さんに学んで資格を取得したのを機に、2017年に月1回の活動を始めた。「ネイルを通して自然に患者とコミュニケーションが取れる。看護の心に通じる」と佐久間さん。後輩の看護師佐藤紗菜さん(24)も資格を取った。

 同病院は19年、施術を受けた25人を対象に福祉ネイルの効果に関する研究調査を行った。交感神経の作用など4指標を調べたところ、施術後に気分の改善や活力増加が確認され、リハビリテーションのモチベーション向上に有効との結果が出た。

 病院管理者兼病院長の角田浩さん(61)は「福祉ネイルを取り入れ、病院の雰囲気が明るくなった。患者が自分で薬を取り出せるようになるなど機能面も効果もある」と話す。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、5月に活動を再開するまで1年半近く休止したが、状況を見ながら活動を充実させていくという。

仙台市の障害者施設の行事でビューティーケアをする松本さん=2019年(松本さん提供)

仙台から全国に拡大「ビューティーケア」

 マッサージと化粧で高齢者や患者の心身を癒やし、生きる喜びを感じてもらう。仙台市から全国に広がったボランティア活動が「ビューティーケア」だ。

 ケアするのは手と顔。クリームを手から腕全体にのばし、手のひらや甲、指を1本ずつ丁寧にもみ、最後に腕全体をS字を描くようにさする。顔もクリームをのばしてマッサージする。蒸しタオルでふき取り、化粧水と乳液で仕上げる。

 活動を続ける「宮城県麗人会赤十字奉仕団」委員長の松本ゆき子さん(80)=仙台市泉区=は「肌と肌が触れ合い、ぬくもりが伝わる。マッサージをしながら相手の話を聞くことで、傾聴ボランティアにもなる」と話す。

 ビューティーケアは1960年、英国赤十字社が始めた。仙台の美容師で、ポリオ(小児まひ)を患って障害が残った故今野清子さんが、美容研修で英国を訪れた際、ビューティーケアを知り、日本にもたらした。今野さんは75年に麗人会を設立し、仙台の病院や高齢者施設で活動を始めた。日本赤十字社の公認ボランティアになり、全国に広がった。

 麗人会の会員は現在55人。仙台市と近郊の病院や高齢者施設計11カ所を月1回訪問していたが、新型コロナウイルス感染拡大で活動がままならなくなった。ボランティア養成講座も休止している。

 松本さんは「自分たちも力をもらい、互いに癒やされる。今はコロナで難しいが、これからも地道に活動を続けていきたい」と前を向く。

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