社説(7/26):ながらスマホの危険/周囲を気遣い わが身も守れ

 東京都板橋区の踏切で今月初旬、31歳の女性が電車にはねられて死亡した。痛ましい事故は、スマートフォンの操作や画面の閲覧に気を取られて注意力が散漫になる「歩きスマホ」が原因とみられている。歩行時だけに限らない「ながらスマホ」の危険性を改めて認識したい。

 現場の状況によると、女性はスマホを操作しながら踏切内に進入した。線路を渡った直後に遮断機が降り、そのまま踏切内にとどまっていた。自身は線路の手前で立ち止まり、踏切の外にいると勘違いした可能性があるという。

 東京消防庁は歩行中や自転車運転中といったながらスマホによる事故で、2015~19年の5年間に211人を救急搬送している。

 発生場所は「道路・交通施設」が8割近い162人。事故種別を見ると、人や物に「ぶつかる」が88人と最多で、「転ぶ」64人、「落ちる」55人と続く。また、少なくても9人は相手の過失に巻き込まれたケースだった。

 視野が極端に狭くなり、周囲への目配り、気配り、心配りもできなくなるながらスマホの問題点は早くから指摘されてきた。自分の身の安全を守ると同時に、周囲の人を危険にさらさないようにするとの視点も持たねばならない。

 神奈川県大和市は20年7月、歩きスマホが交通事故を引き起こす危険な行為だとして、禁止を明記した条例を全国に先駆けて施行した。

 「何人も公共の場所で歩きスマホをしてはならない」とし、「操作は他者の通行の妨げにならない場所で、立ち止まった状態で」と定める。

 罰則規定のない理念条例ではあるが、市内で運行する小田急電鉄など鉄道3社と連携協定を結ぶなど、取り組みは広がりを見せている。

 その後、ながらスマホを規制する単独条例は東京都足立区や荒川区、大阪府池田市などでも制定されている。

 警察庁がまとめた自動車運転中の携帯電話(カーナビを含む)使用による交通事故件数の推移もまた、ながらスマホがいかに危険かを示唆している。増加傾向にあった運転中の画像の注視、通話に起因する交通事故は、当該行為の罰則を強化した改正道交法が19年12月に施行されて大幅に減少。20年は前年比1362件減の1283件だった。

 時速60キロの自動車は、たった2秒でもよそ見しただけで約33メートル進む。同じ速度の停止距離(空走距離と制動距離の和)は約44メートルに上る。スマホに気を取られない対策を講じれば、相当程度、安全性を高められる証しでもある。

 スマホは通話やメールにとどまらず、インターネット、ゲーム、漫画や動画の閲覧などさまざまな機能を備え、今や生活に欠かせない機器であることに間違いない。その便利さを享受できるのは、時と場所、場合をわきまえた上でのことだと肝に銘じたい。

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