社説(7/21):被災地で五輪競技開始/「復興」の理念 諦めず発信を

 東京五輪はきょう、23日の開会式に先立ち、福島県営あづま球場(福島市)のソフトボールと、宮城スタジアム(宮城県利府町)の女子サッカーで競技が始まる。

 福島市の場合、スポーツの祭典を祝う雰囲気からは程遠い。新型コロナウイルスの感染拡大により、あづま球場で3日間にわたって行われる予定の野球・ソフトボール計7試合が全て無観客となったからだ。

 競技開始が東日本大震災の被災地なのは、今大会が「復興五輪」と位置付けられ、復興の歩みや現状、これまでの支援に対する感謝を国内外に発信するためだ。だが、コロナ禍で、その理念はかすんでしまった感がある。

 3月に海外からの一般観客の受け入れ中止が決まり、世界各国の人が福島県を訪れることはできなくなった。今月10日には、コロナの感染状況を受け、県は大会組織委員会に無観客での開催を要請し、了承された。

 県内外で無観客を求める声が多い中、県の判断を支持する人は多いだろう。むしろ、ボランティアの準備などの混乱を最小限にとどめるには、もう少し早く決めても良かった。ただ、復興をアピールする上では、大きく後退することになったのは否めない。

 東京電力福島第1原発事故の影響で、県産食品は14の国・地域で輸入規制が続く。県は当初、あづま球場で県産食品の安全性をアピールするイベントの開催を予定していたが、組織委のコロナ対策ガイドラインに沿って中止を余儀なくされた。

 福島産の果物を振る舞う予定だった24の国・地域の大使の招待も中止に。さらに無観客になったことで、内堀雅雄知事が残念がるように、県外の人に復興の進捗状況や課題を直接知ってもらう機会も失われた。

 一方で、宮城県の村井嘉浩知事は「復興五輪」には有観客での開催が欠かせないとの立場で、被災地で対応が分かれた。

 復興を伝える機会は極めて限られることになった。それでも、諦めずに、発信に力を尽くすべきだろう。

 例えば、組織委などが各国の報道陣が集まる東京のメインプレスセンターに設置した「東京2020復興ブース」はその一つ。震災直後の状況などの画像をスライドショーで紹介する。被災地とつないだオンラインのプレスブリーフィングもあった。

 ブースの開設に際して、組織委の橋本聖子会長は「大会は震災からの復興が源流。復興しつつある姿を、支援への感謝とともに発信していく」とコメントした。

 これ以外にも、無観客でも復興を発信できる方法はまだあるはずだ。政府や組織委の取り組みはもちろん、被災地からもアイデアを積極的に出して、組織委に働き掛けていくことも必要だろう。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る