中卒や高校中退といった理由で十分に学べなかった女性らを対象に、せんだい男女共同参画財団(仙台市)が「学び直しを通したキャリア支援事業」を行っている。基礎学力の低さが貧困につながることを減らすのが狙い。ニーズに合わせて、全国でも珍しい一対一の支援をする。目の前の生活で精いっぱいになりがちなシングルマザーらの自信を育み、再挑戦を後押ししている。
(生活文化部・安達孝太郎)
「生活するだけで必死だった。この事業がなければ、中卒の自分が再び勉強する考えはなかった」。仙台市に住むシングルマザーのアキコさん(仮名、40代)は、学び直し事業が始まった2018年度と19年度に参加した。
夫が「海外で仕事をする」と出て行ったきり帰らず、17年に離婚した。当時小学校高学年の長女を頭に3人の子がいた。夫がいた時は専業主婦だった。家族を支える仕事はすぐには見つからず、生活保護を受けるようになった。この頃、財団が運営する母子家庭相談支援センターを訪れ、学び直しを打診された。
事業では、まずカウンセリングを受けた。「高校に行かなかった理由の一つは、家にお金がなかったから。子どもを自分と同じ境遇にしたくない。手に職を付けたい」。アキコさんは中卒で就職を選んだ背景や、興味のあった看護職を目標としたいと語った。
方向性が定まると、財団と連携する学習能力開発財団(仙台市)のスタッフが一対一で支援する。アキコさんは「准看護師養成校を目指す」と決め、受験科目の数学と国語を教わることになった。1回110分の授業が月に2度ある。円柱の体積を求めるには、まず底面積を計算して…。気付くと、長女と同じことを学んでいた。
「能力に合わせてくれたのでやる気が出た」。うれしいことに、家で子どもと机を並べるうち、「私も頑張る」と長女が以前より前向きになった。
18、19年度にそれぞれ半年間程度学習支援を受けた。准看護師養成校の入学試験に合格し、今年4月から通学している。2年間学び、資格試験に受かれば夢をかなえられる。
アキコさんは「以前は『中卒なので何もできない』と思っていた。学習して道が開けた」と振り返る。
18、19年度に事業に参加したのは21人。うち、シングルマザーは8人だった。
ひとり親の学び直し支援には、高校卒業程度認定試験を受けるための講座費用を国や自治体が支援する制度などがある。ただ、シングルマザーは子育てや介護などいくつもの役割を果たしていることがあり、給付金だけでは十分ではない。
せんだい男女共同参画財団総務企画課の阿部若奈主任は「ぎりぎりの生活で過酷な状況にあるシングルマザーも多い。一人一人に合わせてサポートしたい」と語る。
引きこもり状態で支援からこぼれ落ちていたり、家庭内暴力、性暴力被害などで心の不調を抱えていたり。事業に参加した女性たちは多様な問題を抱えながらも、学ぶことで自己肯定感を高めている。
19歳まで引きこもっていた仙台市の会社員、マユミさん(仮名、30代)も学ぶことで自信を深めた。小学校高学年から不登校になり、中学校もほとんど通わなかった。いじめが主な原因だった。「女の子はおとなしく」「ランドセルは赤」と求められた雰囲気にも息苦しさを感じたという。
引きこもり者の支援施設などを経て、数年前に今勤めている会社で就労体験を始めた。高校卒業程度認定試験には合格していたが、学習経験に乏しく、大きな不安を抱えていた。そんな時、せんだい男女共同参画財団の学び直し事業を知って参加した。
選んだ科目は国語。「文章力が小学生レベルで止まっていた」とマユミさん。「個別に教えていただき、表現が豊かになった。仕事で困ることが少なくなった」と手応えを語る。
財団総務企画課の渡辺ひろみ課長は「参加者の多くが小さな成功を積み重ね、自己肯定感のアップにつなげている」と説明する。
[学び直しを通したキャリア支援事業]文部科学省の男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援実証事業に採択されて始まった。2018、19年度、10~50代の21人が参加。21人の最終学歴は普通高校卒業9人、通信制高卒3人、高校中退5人、中卒4人。20年度も実施しており、せんだい男女共同参画財団は参加者を募っている。参加無料。連絡先は022(212)1627。
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