社説(7/27):次期エネルギー計画案/脱炭素社会への覚悟迫る

 政府の次期エネルギー基本計画の策定作業が大詰めを迎えた。菅義偉首相が掲げる2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)に向け、総排出量の4割を占める電力部門のうち、有力な脱炭素電源の再生可能エネルギーと原子力の位置付けが焦点だったが、21日に公表された計画素案は双方の先行きに疑念を残す。

 素案は50年への足掛かりとなる30年度の電源構成で、再エネ比率を現行目標の22~24%から36~38%まで引き上げた。19年度実績(18%)の約2倍に当たる。菅首相が4月、30年度の排出量を13年度比で46%削減するとの高い目標を掲げたため、慌てて数字合わせをしたのが実情だ。

 30年度に再エネで見込む3300億~3500億キロワット時の発電電力量は、原子力が最盛期だった00年前後の水準に匹敵する。天候に左右され、適地も限られる再エネで実現させるのは至難と言える。

 一方、原子力は現行目標の20~22%を維持した。東京電力福島第1原発事故後に再稼働した10基に加え、原子力規制委員会に申請しながら未稼働の17基全てを高効率で運転しないと不可能な数字だ。9年後に30基近い原発がほぼフル稼働する想定は、今も根強い原発への不信や地元同意取り付けの手間暇を考えると画餅に終わる可能性が高い。

 政府にとって50年カーボンニュートラルは本来、世論受けする再エネの導入拡大と、世論に不評の原子力復権を同時に狙える「王手飛車取り」の妙手のはずだった。脱炭素電源重視の流れに乗り、計画を検討する有識者会議メンバーや自民党、経済界などから原発の新増設・リプレース(建て替え)を計画に明記するよう求める声が続出した。

 福島の事故後、千載一遇とも言える原子力復権の好機をつぶしたのは当の東電だ。柏崎刈羽原発(新潟県)での核物質防護不備が1月に発覚。再び原発不信の世論が高まり、明記は見送られた。

 高い将来目標から逆算して当面の供給と需要を決めていくという、従来とは異質の手法で策定される次期計画は、社会のありようと私たちの生活様式を大きく変える要素をはらむ。

 今回示された電源構成は、30年度の総発電電力量を現行目標から13~14%減の9300億~9400億キロワット時と見込む。産業界や一般家庭による最大限の省エネと排出抑制への努力を折り込んでいる。

 検討過程では30年に太陽光の発電コストが最安になるとの試算も出た。ただ、送電網や蓄電など試算外の整備費を含めると発電全体のコストが上がり、結果的に電気料金が上昇する恐れもある。

 脱炭素社会への道のりで原子力をどのように扱うか。痛みも覚悟の上で再エネの主力電源化に挑めるか。私たち一人一人が自分事として考えねばならない。

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