社説(7/29):ポストコロナの観光/知恵を絞って戦略を練ろう

 新型コロナウイルスの感染拡大で東京都に4度目となる緊急事態宣言が出され、観光需要の回復も足踏みは避けられない状況だ。広域移動は抑制が求められており、打撃を受ける観光産業を引き続き支える必要がある。

 一方、ワクチン接種が進み、いずれは観光需要も回復が見込まれる。今はまだ我慢の時期だが、感染収束後を見据え、新たな流れも踏まえた観光再生の地域戦略をしっかりと考えておきたい。

 6月に閣議決定された2021年版観光白書には観光産業の厳しい実情が浮かんだ。20年の日本人国内旅行者数は前年比50%減の延べ2億9341万人。渡航制限の影響が大きいインバウンド(訪日外国人旅行者)数はさらに落ち込み幅が大きく、前年比87・1%減の412万人だった。

 白書は近場の宿泊が増えるなど旅行形態の変化も指摘した。昨年7~12月に居住地の都道府県内に泊まった人は31・8%で、前年同期から7・0ポイント上昇。同行者は「夫婦・パートナー」が増え、身近な人以外との接触を避ける傾向をうかがわせた。密を避けるアウトドア需要も高まった。

 環境激変を受けて観光誘致戦略も対応を迫られている。東北6県と新潟県の官民でつくる東北観光推進機構が6月に発表した5カ年の中期計画(21~25年)は、従来力を入れてきたインバウンドに加え、日本人旅行者もターゲットとして明確化した。

 新しい観光需要の創出に向けて柱に据えたのが、2、3泊以上の中長期滞在の促進だ。1人当たりの旅行回数減少も想定し、関連消費拡大を狙う。温泉をベースに、体験や食、学びなどの滞在型コンテンツを組み合わせる。現地でプランを提案、手配する仕組みの整備も目指すという。

 観光需要は国内旅行から回復すると予想されており、地域間競争が激化する可能性がある。選ばれる地域となるには広域連携は欠かせない。機構は東北域内の観光データを一元化し、周遊などの企画立案などに活用するデータマネジメントプラットフォームの構築にも力を入れる。

 ともに順調に進めば、いずれ戻るインバウンドの誘致にも効果を発揮しそうだ。東北はコロナ禍前、東日本大震災の影響もあって訪日客誘致で出遅れ気味だった。人口減少などを考慮すれば、インバウンド需要の取り込みは欠かせない。全国的に仕切り直しとなったのを機に、ターゲット層の明確化や量より質への転換などを戦略的に探り、需要回復に備えてほしい。

 宮城県や秋田県など一部自治体は本年度、観光振興の計画策定を進めている。苦境にある業界の現場には「先の計画より目の前の支援を」という声もあるだろう。旅行者の安全安心確保に向けた環境整備支援などを通じて足元の需要を支えながら、先も見据えて官民で知恵を絞りたい。

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