「夏の日本酒」多彩な味わい 爽やかな香り、キリリと辛口

 夏と言えばビールを連想しますが、最近は夏向けの日本酒が増えてきました。香り爽やか、飲み口すっきりなど幾つかのタイプに分かれ、相性の良いつまみや料理で味わいも深まります。新型コロナウイルスの感染拡大で「家飲み」する機会が増える中、夏酒の動向と楽しみ方を探りました。
(生活文化部・菊地弘志)

夏の日本酒とつまみを取りそろえたフェア=10日、JR仙台駅

ラベルにも気配り

 「夏酒の明確な定義はないが、欠かせないのは冷やしておいしいこと。各蔵元の工夫で多彩なタイプを楽しめるようになり、銘柄より季節感で選ばれる傾向が強まってきた」

 仙台市宮城野区の酒販店「酒のかわしま」本店店長の今野雄司さん(43)が説明する。

 今野さんは、夏酒の主なタイプに(1)爽やかな香り(2)アルコールを抑えた軽快すっきり系(3)キリリと辛口(4)アルコール高めのオンザロック向け-を挙げた。他に微発泡タイプなどがあり、涼やかな夏らしい図柄のラベルも多い。

 市内2店舗で扱う夏酒の種類は年々増えているという。今年は「夏酒」と大きく書いたB3判のポスターを初めて作り、取引先の飲食店に配った。夏酒の主なタイプを載せ、コロナ下で客足が遠のく飲食店をもり立てる。

マリアージュで花開く

 夏酒をより楽しめるよう、食品とのマリアージュ(組み合わせ)を提案する取り組みも出てきた。

 7~11日、JR仙台駅2階コンコースで、「夏のお酒とおつまみフェア」が開かれた。夏酒人気の上昇を受け、JR東日本東北総合サービス(青葉区)が初めて企画した。

 宮城、秋田、福島3県から夏向けの日本酒八十数種類が登場。隣には、ハタハタの薫製、クリームチーズのみそ漬け、「さけとば」のスティック、たこせんべいといったつまみを販売するブースも並び、愛飲家や通り掛かりの通勤客らが熱心に品定めした。

 「さまざまなマッチングを試して、新たな飲み方を開拓してほしい」と、同社仙台営業所営業企画グループ総括店長の西堀英さん(46)。ホヤ、イカの塩辛を販売した塩釜市の平塚商店の平塚憲さん(59)は「酒とつまみが並ぶと、食卓のイメージが膨らむ。相乗効果で客層が広がった」と話す。

蔵元も積極開発

 夏は従来、日本酒が最も振るわない時季だったが、この10年ほど、夏向けの商品を積極的に開発する蔵元が目立ってきた。青葉区昭和町で日本酒バーを営む小林龍星さん(40)は「経営と醸造の双方を担う蔵元杜氏(とうじ)が増え、販売を見据えた酒造りが進んだ」とみている。

 かつては通いの杜氏が半年間、蔵に滞在して酒を造り、残りの半年は醸造を休むパターンが多かったが、通年で稼働するようになってきたという。「季節を絞ることで特色を出せるし、ラベルなどで遊び心も発揮できる。伸びしろは大きい」。小林さんは夏酒のさらなる市場拡大に期待する。

素材を生かしたつまみが◎ チーズケーキやアイスもいける

 夏の日本酒には、どんなつまみや料理が調和するのか。宮城県内で日本酒の研究、技術支援に携わってきた県食産業振興課技術副参事の橋本建哉さん(55)に教わった。

 夏酒のつまみは、なるべく手間をかけず、素材を生かしたい。魚介類のバターソテーや、あぶったカマンベールチーズは、爽やかな香りの酒によく合う。

 アナゴの白焼き、シラスのパスタ、オリーブ油と岩塩を掛けた冷やしトマトはぜひ試してほしい。焼いた野菜にクリームチーズソースを添えるのもいい。意外といけるのが、チーズケーキとアイスクリームだ。

 夏に限らないが、迷ったら、その土地の酒と食べ物を合わせるのがお勧め。宮城県なら、しっかりとうま味ののった三陸エリアの酒は、味の濃い魚介料理にぴったり。やや酸味があり、すっきりした県北の山あいの酒は肉料理、穏やかで切れのある県南の酒は野菜と相性がいい。

[橋本建哉(はしもと・けんや)]宮城県産業技術総合センター食品バイオ技術部主任研究員などを経て4月から現職。1965年、仙台市生まれ。90年、東北大大学院農学研究科博士課程前期修了、宮城県庁入り。酵母開発など日本酒に関する研究や生産者への技術支援に長く携わる。

河北新報のメルマガ登録はこちら
+W 共に生きる

 「+W」のWには「We」「With」「Woman」「Work」「Worth」などの意味を込めています。暮らし、仕事、ジェンダーなど幅広い話題を取り上げ、多様な価値観が尊重される共生社会の実現を目指します。


企画特集

先頭に戻る