コメ先物取引廃止へ 東北の生産者落胆「所得確保の手段減った」

スーパーの売り場に並ぶ宮城県産ひとめぼれ。2020年4月に先物取引が始まった

 農林水産省は6日、大阪堂島商品取引所から申請のあったコメ先物取引の本上場を認めなかったと発表した。取引に参加する生産者などの数が少なく認可基準に不適合な点があるとして5日に大阪堂島商取から意見を聴取したが、不十分と最終判断した。堂島商取の中塚一宏社長は東京都内で記者会見しコメ先物取引から完全撤退すると表明。国内唯一のコメ先物は上場廃止となり、姿を消すことになった。

 大阪堂島商品取引所が試験上場中のコメ先物取引は、農林水産省が本上場を認めず、廃止されることになった。東北では秋田県産あきたこまち、宮城県産ひとめぼれの2銘柄が対象で、取引する生産者らは「所得確保やリスク回避の有効な手段が減った」と肩を落とした。試験上場が約10年続いたものの、制度の周知不足や認可基準の曖昧さを指摘する声も上がった。

 「参加する生産者や流通業者は増えてきていたが、農協界で理解が深まらなかった」。当初から取引に参加してきた大潟村農協(秋田県大潟村)の小林肇組合長はこう分析する。

 試験上場は東京電力福島第1原発事故直後の2011年8月に始まり、序盤は放射能汚染への懸念などから価格が乱高下。農協グループは「主食のコメを『マネーゲーム』にさらす」(幹部)と反対してきた。

 小林組合長は「先の売却価格を決められることで農家は計画的に生産でき、重要な経営指標となる」とメリットを説明。農水省に対しては「納得のいく説明が全くない」と批判した。

 あきたこまちは18年10月、ひとめぼれは20年4月に取引がスタート。月間出来高は今年3月、あきたこまち7445枚(1枚1020キロ)、ひとめぼれ6189枚(1枚1080キロ)と、ともに過去最高を記録した。新型コロナウイルスの影響などで米価が落ち込む懸念から、リスク回避を図る取引が活発化したという。

 自社農場などでコメを生産する農業生産法人舞台ファーム(仙台市)は「本上場後、農業者の選択肢の一つとして利活用を増やしていきたいと考えていたので非常に残念」と落胆した。

 東北の農業関係者からは「価格指標の必要性は感じるが、先物取引の仕組みや影響がよく分からない」との声が依然少なくない。

 東北大大学院の冬木勝仁教授(農業市場学)は「先物取引は現物取引に比べてリスクヘッジ機能があるが、取引に習熟していないと難しく、参加するには一定の数量が要る。投機的なイメージが先行し、制度や意味合いが浸透していないのではないか」と指摘。その上で「国は参加者数や取引量など認可の基準となる数値を明確にすべきだ。いったん今のスキームはやめて、生産者団体を納得させた上で作り直した方がいい」と提案する。

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