「農業収入保険」東北で存在感 取引先倒産からコロナ影響までカバー

21年産の青森リンゴの初競り=8月3日、弘前市

 農家の減収を穴埋めする「農業経営収入保険」が東北6県で浸透しつつある。ほぼ全ての農産物が対象で、自然災害による収量減少や市価の下落、取引先の倒産、新型コロナウイルスの影響など幅広いリスクをカバーする。台風や豪雨といった大規模災害が相次ぎ、コロナ収束の見通しも立たない中、各県や農業共済組合は普及拡大を図る。

加入件数1・5倍

 農林水産省によると、東北6県の収入保険の加入件数と支払金額は表の通り。2021年の加入件数は計1万3732件、20年の支払金額は計24億8500万円で、それぞれ前年の約1・5倍に増えた。

 加入件数が最も多い青森県の農業共済組合関係者は「リンゴ産地の弘前市やその周辺で比較的、加入率が高い。自然災害による収量減少が補填(ほてん)の対象となる『果樹共済』と比べ、メリットを感じている農家が多いのではないか」とみる。

 収入保険は19年1月、安倍政権の農業改革で柱の一つとして導入された。「青色申告」と呼ばれる納税手続きを行っている個人・法人の農業者が加入でき、保険料と積立金、事務費を支払う。保険料と事務費には50%、積立金には75%の国庫補助がある。

 保険期間の収入が基準収入の9割を下回った場合、下回った額の9割を上限として穴埋めする。農林水産省は基準収入が年1000万円の場合を例示。保険料7万8000円と積立金22万5000円、事務費2万2000円で最大810万円の補填が受けられるという。

野菜、コメ、花きの順に

 トマトやホウレンソウ、キクを生産する有限会社マルセンファーム(大崎市)は水害などのリスクに備え、制度開始と同時に加入した。19年10月の台風19号豪雨でハウスや事務所が最大3メートル浸水する被害を受けた上、20年は作付けできない時期があり、収入が約4割も落ち込んだ。

 補填を受けるまで利用できる無利子のつなぎ融資を受け取り、経営を継続した千葉卓也社長(48)は「大きな自然災害の場合、完全復旧までに最低でも2、3年はかかる。資金繰りが楽になり助かった」と振り返る。

 宮城県農業共済組合によると、県内では21年6月末現在、20年産農作物を対象とした収入保険の支払額が4億649万円に上る。原因はコロナに伴う販売先の休業や需要低迷による価格低下、長雨や低温など。営農形態別では野菜が最も多く、コメ、花きと続く。

 同共済組合と日本政策金融公庫仙台支店は7月15日、収入保険を含む農業保険の普及推進に向けた覚書を交わした。

 佐藤敬組合長は「共済制度の補償対象は自然災害が主だったが、収入保険はコロナによる経済的な打撃や販売不振にも対応できる」と強調。仙台支店の鴫谷元・農林水産事業統轄は「収入保険の加入促進や融資を通じて、農業者の経営の維持発展に取り組みたい」と話す。

[農業経営収入保険] 全国農業共済組合連合会が運営する。保険期間は個人が1~12月、法人は事業年度の1年間。基準収入は過去5年間の平均収入を基本に、保険期間の営農計画も考慮して設定する。コスト増も補填する特別対策事業などが措置されている肉用牛や肉用子牛、肉豚、鶏卵は対象外。農業共済や収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)など類似制度と重複加入はできない。

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