社説(8/13):主食用米700万トン割れ/米価対策より需要喚起を

 新型コロナウイルス禍で外食需要が押し下げられているとはいえ、コメ需要は今後も長期的な減少が見込まれる。補助金頼りの転作で供給量を調整し、米価を維持する手法は、いずれ行き詰まるのが明らかだ。

 日本の水田農業を守っていく視点から、生産性の向上と需要喚起を軸に政策を総点検していく必要がある。

 2021年産の主食用米の作付面積が、前年より6万2000~6万5000ヘクタール減る見通しとなった。削減規模はほぼ宮城県全体の作付面積に匹敵する。

 流通業者の倉庫には昨年から在庫が積み上がり、供給過剰に陥る恐れが強まっていた。さらなる米価の下落を懸念した国や農協は田植え後にも生産者に飼料用米などへの切り替えを求め、「過去最大規模」(野上浩太郎農林水産相)の作付け転換を実現した。

 作況が平年並みだった場合の生産量は694万~696万トンとなり、比較可能な統計が残る中では初めて700万トンを下回る。これで当面は大幅な値崩れが避けられる水準になるという。

 コロナ禍の影響で昨年産米の価格が6年ぶりに下落したことを受け、農水省は本年度予算などに過去最大級の計3400億円の転作支援策を計上した。それでも4月末時点では需要に見合う作付けが実現できず、田植え後まで混乱が続くことになった。

 問題なのは、供給過剰の懸念が生じる度に転作補助金の積み増しに頼って米価を維持する構図だ。こうした場当たり的な対応を繰り返していては、早晩、消費者の支持も失いかねない。

 1人当たりのコメ消費量はピークの1962年度に1日茶わん約5杯だったのが、2019年度は2杯強にまで減っている。食生活の変化でコメ需要の減少が続く中、近年は特に価格の高止まりが減少ペースに拍車を掛けている面も見逃せない。

 農家所得を維持するため、産地は経済的に比較的余裕のある世帯をターゲットに、競って食味重視の高級ブランド米の開発を進めてきた。

 しかし、共働き世代の増加やライフスタイルの変化を背景に、自宅で毎日ご飯を炊いて食べる家庭は減り、中食や外食の需要が高まっているのは周知の通り。さらに格差の広がりもあって、家庭内で食べるコメに、より安さを求める傾向も強まっている。

 高齢化が進む農家にとっても作りやすく、低価格で供給できる多収性品種の可能性にもっと目を向けるべきではないだろうか。

 コメを主食とする和食の価値は世界に認められている。景観形成や水害防止、水源涵養(かんよう)など、水田が果たす多面的な役割についても国民の理解は深まってきた。日本のコメづくりと水田を守るため、長期的な視点で需要回復に向けた議論が求められる。

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