「原子力村中枢部」の葛藤一冊に 独善と閉鎖性の弊害指摘

作者の経験を踏まえ事故原因を解き明かす新著

 元日本原子力発電理事の北村俊郎さん(76)=福島県須賀川市在住=が、東京電力福島第1原発事故に至る原子力業界の過ちをたどる「原子力村中枢部での体験から10年の葛藤で掴(つか)んだ事故原因」を出版する。退職後に移住した福島県富岡町で原発事故に遭い、避難生活を送る中で書きためた随想をまとめた。考察は業界解剖にとどまらず、巨大組織が陥りがちな独善と閉鎖性の弊害を鋭く指摘する。

 国内の原発運営の歴史を業界の内部事情を知る立場から掘り下げ、大津波が原発を襲う危険を知りながら対策を先送りした東電の経営判断の構造的な要因を読み解いていく。

 東電は不安要素の分析や対策の予算的裏付けをしないまま「言葉で注意力を喚起し、安全になったような気分になっていた」。規制当局には「文書や計画が整ってさえいればいい」という形式主義がまん延した。業界が自浄機能を失い、事故の芽を摘めなかった経緯を独自の視点で追う。

 東電のような巨大組織が大事故や深刻な不祥事を起こしてしまう背景には「組織の集団的私物化がある」と看破した。共同体の利益を守ることに精を出し、内外の批判を封じ、大事な判断を誤る。北村さんは「内部にいる者は感覚がまひし、少しも悪気はない」と経験を踏まえて皮肉る。

 北村さんは原子力の可能性を信じて推進してきた身として、居たたまれなさを抱く。避難指示区域にある富岡町の自宅への帰還を望むが、先行きは依然として見通せない。「現役時代にもっと警鐘を鳴らすべきだった。反省すべき点、改めるべき点をしっかり伝えていく責任がある」と語る。

 四六判239ページ、1980円。8月末発売予定。連絡先はかもがわ出版075(432)2934。

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